オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

練習会を開こう! ~10(8)回練習会責任者より~

 こんにちは、こんばんは。慶應義塾大学4年生の小泉知貴と申します。前2人がとてもいい記事を書いてくださっているので、私が後を引き継ぐのは大変恐縮ではありますが、是非気楽に読んでください。

 先日、Advent Calendarの企画の立ち上げの立役者である田中基成君から、記事の執筆依頼をいただきました。おそらく彼は私の日本学連幹事長という立場からの記事を期待していたと思われます。その期待に応えたいところではありましたが、日本学連というスケールの大きいものを私ごときが扱えるわけもない(そもそも、日本学連の全貌を把握しきれていません…)ので、表題のような内容にしました。

 私は今年度、10回練習会というイベントを開催しています。その内容は、名前から見てわかるように、1年間に10回練習会を開こう、というものです。諸事情により、第9回と第10回は開催することができなくなってしまいましたが、ちょうど本日、第7回練習会を無事終了することができました。1/21に最終回が行われます、皆さん、ぜひご参加ください。

 

 さて、これから書く記事は、ざっくり言えばもっとみんなで積極的に練習会を開いていこう、というものです。どちらかというと学生向けの記事になってしまいますが、ご了承ください。

 

オリエンテーリングで速くなるためには?

 皆さんはオリエンテーリングで速くなるために必要なことは何だと思いますか?諸説ありますが、一番大きな要素を示すのは、間違いなく「オリエンテーリングの数をこなすこと」だと思います。どんなに色々と理論を考えたり、トレーニングをしたり、地図読みに精を出したとしても、山に入る経験が少なければ、それらを活かしきることはできません。他のスポーツでもそうですが、練習をしなければ上手くなれないと思います。オリエンテーリングの場合の練習は、山に入らなければ行うことができない、という特徴がある(スプリントはちょっと違いますが)ため、ある程度山に入る回数を増やすことは、速くなるためには必須の条件になります。

 とはいえ、山に入ることのできる機会は決して多くはありません。なぜなら、日本にいる以上、基本的にオリエンテーリングは休日にしかできないからです。オリエンテーリングを行える環境は生活圏から少し離れた場所にあることが多く、平日の学校・仕事終わりに…といった感じで行くことは困難です。なので、オリエンテーリングをするのは、基本的に休日に開催されている大会に参加することが主になります。とはいえ、大会では基本的にレースを一本走っておしまいです。つまり、オリエンテーリングができる回数というのは非常に限られているのです

 その改善策の一つが練習会に参加することだと思います。練習会ならば、山に長くいることができるため、レースを走るだけでなく復習もできたり、またレース以外にもメニューをこなしたりなど、一日に何度もオリエンテーリングをする機会を得ることができます。コーチの方や先輩がいれば、時間を見つけて直接指導していただくこともできるでしょう。色々な団体が試行錯誤して提供してくださる大会も非常に魅力的ではありますが、オリエンテーリングの成長という観点から見れば、練習会のコストパフォーマンスの高さは多くの人に納得していただけるかと思います。

 

〇練習会の要素

 一言に練習会といっても、その内容はそれぞれで大きく異なってきます。スプリントだったりフォレストだったり、近郊で行ったり少し遠いところまで足をのばしたり…というように、練習会には色々な形があると思います。また、先日東大OLKが行ったゴリラ杯(アップ率15%越え)のようにコンセプトが明確な練習会も稀に開かれています。

 当たり前のことではありますが、多くの人が参加したい!と思う練習会は、参加者のニーズを満たすことができるものです。そして、私が思うに、そのニーズは大きく分けて、「開催地・参加費・開催時期(タイミング)・コースの質・コンセプト」になると思います。具体例として、私が今年開催した練習会について、これらの要素を列挙してみます(コースの質は除きます)。

 

第1回「テスト期間息抜き練」…93人・東京(公園)・500円・テスト期間

→テスト勉強の息抜きに、さくっと走れるスプリント練習会。

第2回「スプリントセレ対策練」…121人・東京(公園)・1000円・セレ直前

→セレクション前に、本番を意識した対策練として。

第3回「新入生向け練習会」…44人・埼玉(山)・500円・8月中旬

→一年生がオリエンテーリングを楽しめるようなメニューを用意。

第4回「日光指導練習会」…67人・日光(山)・1200円・10月初旬

→超豪華コーチ陣をお招きして、一日指導を受けられるような練習会。

第5回「帰ってきたKOLC復活大会」…201人・矢板(山・リメイク)・1800円・インカレ1月前 ※大会形式

→昨年度KOLC大会の行われたテレインの完成版を公開(完成しなかった)。

第6回「インカレスプリント対策練」…92人・東京(公園)・700円・インカレ1週前

→インカレ本番直前の最終調整の場を提供。

第7回「ミドルセレ対策練」…96人・日光(山)・1500円・セレ2週前

→ロングからミドルへと切り替え、セレクション本番に備える。

 

 複数の練習会を開催していて、「参加費以上に、開催時期やコンセプトの方が大事である」ということに気づきました。一概にいうことはできませんが、開催時期に合わせたコンセプトで練習会を開く、ということが一番参加者のニーズを満たすことにつながるのかもしれません。実際に遠方の開催で、かつ参加費も少し高めの帰ってきたKOLC復活大会でも、インカレ一か月前の矢板ロングという要素も相まってか、200人以上の参加者にお越しいただいております。また、私の練習会では、対策練という形をとっているものが多くはなっていますが、それ以外にもテスト期間息抜き練という(ふざけたタイトルの)練習会にも100人弱の人の集まっていただくことができました。この時はそれ以外に練習会がなかった事が、参加者が集まった一番の理由ではありましたが、このことは、全ての人が参加するわけではない遠征の裏での練習会も、一定のニーズがあることが予想できます。

 今後、練習会を開くときには、これらの要素を意識してみてはどうでしょうか?開催時期に考えられるニーズを早い段階で察知して公報・提案すれば、たくさんの人が来てくれるかもしれません。

 

〇練習会を開こう!

 練習会の重要性とその要素をここまで書いてきましたが、それを理解したとしても、「さぁ、練習会を開こう」、とはならないかと思います。その理由は、「申請や準備が面倒くさい」「いいコースを組める自信がない」「練習会を開いても自分の練習にならない」などが考えられるかと思います。他にもあるかもしれませんが、ここではこの3つについて考えてみます。

 

・申請や準備

 おそらく、一番練習会でネックになってくる要素かもしれません。大会などとは違い、メインの運営役員が少ないがために、これらが負担に感じる人はいると思います。しかし、ちゃんとやることがわかっていれば、準備は大きな負担にはなりません。

 やるべきことを時系列にまとめてみます。

 

1~2か月前…練習会の開催日程・開催地・コンセプトなどを決める

        開催地の県協会と、地図版権所有団体(学生はここに加えて学連)に申請

1か月前…要項・エントリーシートの用意→公開

3~4週間前…コース組み(+必要があればコースコントロール)

1~2週間前…エントリー締め切り→エントリー・スタートリスト・プログラムの作成→公開

3~5日前…資材・運営役員割り振り

当日…設置・運営・撤収

数日後…報告書提出、地図代振り込み

 

 詳しい方法などは場合により違いますが、おおまかにはこのような形になるかと思います。やることが多いように見えますが、その時その時にやることは決して多くありません。しっかりとスケジュール管理をしていれば負担は少なくなります、慣れれば簡単に準備することができます。

 

・コース組み

 少なからず、自分で組むコースに自信がない人はいると思います。一生懸命組んだコースであっても、参加者があまり楽しんでくれないと、かなりへこみます。正直、練習会を開くことと、コース組みの慣れは別物であるといわざるを得ません。

 しかし、ここについては他の人を頼ってしまってもいいと思います。コース組みが得意な人に委ねるもよし、だれかにコースコントロールをお願いするのもありです。どうしても自分でコースを組みたいのであれば、練習しましょう。コースはいくらでも用意する手段があるので、これを理由に練習会開催を諦めてしまうのは非常にもったいないと思います。

 

・自分の練習について

 よく、「自分で組んだコースを走っても練習にならない」「設置をしてしまうと覚えてしまうから、意味がなくなる」という人がいます。確かに、初めてその地図を読む人よりはアドバンテージが生まれてしまいますし、それが原因でナビゲーションが容易になってしまう要素があることは否めません。

 しかし、だから練習にならない、という観点は間違っていると思います。仮にルートやポスト位置を知っていたとしても、ナビゲーションの練習には十分できます。というか、オリエンテーリングはそんなに単純なスポーツではありませんよね。ルートを知っていたところで、実際にプラン通りにたどることは容易ではありませんし、また、ポスト位置を知っていたとしても、それはリロケートが容易になるだけでナビゲーション自体には影響を及ぼしません。

 いずれにせよ、コースを組んだり、設置をしたからといって練習が全くできなくなるわけではありません。普通にまっさらな状態でオリエンテーリングするのとは事情は異なりますが、それを理解したうえで練習すればいいのではないでしょうか。

 

 練習会を開くことは決して難しいことではありませんし、自分の練習も十分することができます。…と、デメリットと考えられる要素に対しての反論を書いてきましたが、メリットになりうる要素もここに書いておきます。

 まず、一番大きいのは達成感です。周りの人にとっては、数ある練習会のうちのひとつかもしれませんが、主催者側にとっては長い間色々と試行錯誤をしてきたものであるため、思い入れは強くなります。終わった後に、参加者から「楽しかったよ」と一声かけていただくだけで、努力が報われた気になります。よく、東大OLKの皆様がよく、帰る前に主催者にあいさつをしてくれますが、本当にこれは嬉しいです。これが練習会を開く一番の目的であるといっても過言ではありません。

 次に、運営やコース組みの技術が高まります。オリエンテーリングをする以上、ただ競技をするだけではなく、運営をする機会も多くあります。具体的には所属団体主催の大会やインカレ運営、全日本大会の運営などが考えられるでしょう。この時に、最低限の知識として練習会運営の経験は必要になると思います。また、実際に自分が組んだコースを走ってもらった感想を聞くことは、机上でコース組みの練習をすることの何倍もの価値があります。そして、コース組みのセンスが高まれば、予想コースなども質がいいものが組めるようになり、結果として狙った大会でいい記録を残すことに役に立つことでしょう。

 最後に、少しいやらしいですがお金を稼ぐことができます。私が開いている練習会は、オリエンテーリングの機会を提供するということとは別に、私の所属しているKOLCの大会資金を稼ぐ、という目的もあります。最終回の見通しがまだ立っていませんが、おそらく8回で30万円近くになる見込みです(本当に、参加してくださっている皆さん、ありがとうございます)。

 

 以上のように、練習会を開くことは、確かに大変なこともありますが、多くの人が喜んでくださる場を提供できるだけでなく、自分自身の成長の機会も得ることができます。是非、練習会を開くことを検討してみてください。

 

〇最後に…

 突然ですが、私の夢について書きたいと思います。それは、「だれもが毎週オリエンテーリングを楽しめる環境を作る」ということです。これは、私が関東学連の幹事長に就任したときに表明したことなのですが、残念ながらそれを現役中に実現することはかないませんでした。毎週全国のどこかでオリエンテーリングのイベントが開催されていますが、全てに参加するにはお金と時間がいくらあっても足りません。なので、それとは別に裏で練習会を開き、遠征に行けない人は近場でオリエンテーリングを楽しむことができる、そのような環境が私の理想です。

 完全に実現できるとは思っていませんが、少しでもこれに近い状態になればいいな、と思い、今回の記事を書かせていただきました。私の練習会のように公開練習会を誰かが開くのでもいいですし(10回練習会後継者募集中!!交代制などでも!!)、そうではなくとも、各団体がそれぞれ練習会を開き、そこに他団体の人を招く、という形でもいいと思います。オリエンテーリングをしたいときに、そこにイベントがある、とても魅力的な環境だとは思いませんか?

 最初に書きましたように、オリエンテーリングで上達するためには、数をこなす必要があります。練習会が増え、毎週のようにだれもがオリエンテーリングをできるようになれば、日本の競技レベルは上達し、より公認大会や全日本大会も盛り上がるようになると思います。是非、皆さんも練習会を開きましょう!!