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オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

トロント(および、カナダ)オリエンテーリング事情

トロントオリエンテーリングクラブ 加藤弘之 

会社の都合で、トロントに二年間滞在している加藤です。この記事が出る一か月後には、日本に帰国していますが、ちょうど良い機会ですので、カナダ・トロントオリエンテーリング事情について紹介したいと思います。異国の地でのオリエンテーリングを経験して感じた、日本の良さ、日本でも取り入れるべきこと、カナダの魅力など、つづりたいと思います。

自己紹介

最初に、自己紹介させていただきます。2002年卒の東大OLK出身です。同期には、Lapcenter管理人で有名な的場さんがいます。他大の同期では、O-support代表の小泉成行さんがいます。永遠のライバルです。日本にいる間は、ES関東Cに所属してました。学生時代は、インカレ2位を3回取るなど立派なシルバーコレクターでした。卒業後、全日本勝ったり、アジア選手権勝ったりしましたが、旬な時期は短かったような気がします。

海外遠征大好きで、これまでにオリエンテーリングをしたことのある国・行った回数は、Sweden・3回、Norway・1回、Denmark・1回、Great Britain・1回、Latvia・1回、Ukrain・1回、Czech・4回、Hungary 1回、Bulgaria・2回、台湾・1回、中国・1回、香港・1回、USA1回、カナダ数回です。いろんな国や、いろんな大会に出ました(JWOC99,2000、ユニバー2002、WOC2006-2010、WC2005、EOC2008、WG2009、O-ringenなど)。そんな海外オリエンテーリングマニアが、カナダのオリエンテーリング事情を紹介したいと思います。

トロントとは?

まず、トロントの基本情報を紹介します。トロントは、五大湖の一つであるオンタリオ湖の脇に存在する北米第4の都市です。人口260万人で、ほぼ東京の1/4程度、横浜市よりも少ないぐらいです。オンタリオ州の州都で、カナダ最大の経済都市です。特徴は、移民が多く流れ込んでいる都市です。世界で暮らしやすい都市、第二位に選ばれるほど、暮らしやすい良い都市です。治安も北米の街の中では、かなり低く(犯罪率は、北米のほかの都市の半分以下、でも、日本の3倍ですが)。町は清潔で、ごみはほとんど落ちていません(ホームレスはたまにいます)。気候は、夏場は、30度を超えますが、冬場は、最高気温が。特に、オンタリオ湖に面しているため、冬場に猛烈な風が吹くので、外に5分もいると死を身近に感じられます。冬の気候以外では、とても暮らしやすい良いところです。トロントには、MLBNBA、NHL、MLSのチームがあるので、一年中スポーツ観戦が楽しめる良い都市です。

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グーグルマップ、ざっくりカナダの大きさを感じてみるために、日本地図を重ねてみた。思ったより、日本長いな。面積は、比べ物にならないですね。

トロントオリエンテーリングクラブ

そんなトロントに二年間住むことになり、オリエンテーリングクラブを探しました。カナダはオリエンテーリングが盛んとは言えませんが、それでも大きな都市にはオリエンテーリングクラブが存在します。トロント周辺にも、トロントオリエンテーリングクラブ(TOChttp://torontoorienteering.com/wp/)、Don’t get lost(という名前のクラブです)、Starsなどのクラブがあり、それぞれ少人数ながらも集まってオリエンテーリングやアドベンチャーレースなどをしています。TOCの総在籍者数は、良くわからないのですが、ウクライナ系移民、北欧、チェコからの移民など、本国でオリエンテーリングをやっていた人が集まって活動しているという印象で、それぞれ本国で培った運営手法(地図調査、コースセットなど)を駆使して、運営されているのが特徴でした。年会費は、30ドルなのですが、練習会参加費割引、水曜日の練習会が無料など特典は満載でした。主な活動内容は、①水曜夜の練習会、②年に二回の練習会③総会(飲み会)の3つです。

 Wednesday-night

まず、一番考えさせられたのが、5月~8月の間の毎週水曜日の夜にトロント近郊の公園、森林公園にて開催されていた練習会です。運営者が、地図を印刷して、ポストの代わりに、赤いスズランテープを巻いただけの簡易な運営で、 毎回、20人程度が集まるぐらいの小規模なもので、皆思い思いの時間に来て走って、三々五々いなくなるので、あっさりとしたものです。それでも、オリエンテーリングのクラブたるものオリエンテーリングの練習をする機会があってこそです。毎週、顔を合わせるということがクラブの活動として重要で、やはり、地域クラブというのはこういうものだよなと、これは日本でも見習うべき点だなと思いました。それぞれは、そんなに面白いテレインでやれるわけではないですが、仲間が集まって同じ時間を過ごす、顔を定期的に合わすというのは大事にしていきたいなと思った点です。

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トロントでは有名な公園 High Parkの地図。5-6の区画には桜があり5月の頭に見ごろになる。

 

春・秋の練習会

4月と9月に練習会があります。以下の地図は、4月の練習会。ロゲインタイプだったのですが、特別ルールが二つありました。

①時間限定コントロール

②First runner's point

一つ目は、M○○と書かれているコントロールには、スタートから○○~○○+10分の間だけ、ヒトが来て、ポストを持っているよ。ということ。つまりM30は30-40分の間だけポストが存在します。それによって、戦略性が高まります。

二つ目は、各コントロールに、ヘアゴムのようなものを置いておき、一番最初にそのコントロールに行った人は、+10点などのような+特典もあります。このような工夫があるのも、熟練した経験ならではだと感じます(この運営はチェコ人が運営していました)。

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 Ontario Cup

冬場11月~2月にかけて、トロント周辺のクラブが共同で運営し、持ち回りの練習会を全4回ぐらいを行います。

 特徴は、ハンデのつけ方です。年齢と、性別でハンデを0-7まで割り振ります。そのハンデに沿って、以下のルールで走ります。

  • 四角に囲まれた区画の中で、ハンデの数を差引した数のコントロールを取る。(ハンデ1の人は、7-1=6個のコントロールを取る)。Dog Boneタイプの場合は、6セットとる。B-bは、どちら向きにとってもOK。でも、Bからbに行く間はほかのコントロールを取ってはいけない。
  • 同時スタート
  • 自分のハンデの数の番号が最初のコントロ―ルになる(ハンデが2の人は、2番からとる。):このルールは、適用されない場合もある。

 

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このコースの場合は、スコアーO形式。最初のコントロールは、ハンデの数。
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Dog Boneタイプ。ルートチョイスをミスって、大きなミス(プラン上では、Ⅽ -G-A-E-F-Dと行くつもりが、Gを飛ばしてしまった)。その上、この日はハンデが強すぎて、シニアクラスに惨敗。

この方式のメリットは、①皆が同時にスタートできるので、競える。スタートの運営が楽②皆が同じ状況で競える。③BOX内である程度ばらける。ということが考えられます。
 参加者数が少ないので、年齢別のカテゴリーで表彰にしてしまうと、各カテゴリーが2,3人しかいないということになるので、こういうハンデ方式が生み出されたのだと思います。しかし、運営の簡素化&皆が競える環境を作るという意味で、とても面白いアイデアだなと思いました。やはり、オリエンテーリングの基本はほかの人と競い合うこと、そのために、いかに異なるカテゴリーのヒトを同じ土俵に挙げさせるか。という工夫だと思います。


オンタリオ選手権

今年は、トロントの隣の年のクラブが運営の持ち回りだったので、気軽に参加できました。オンタリオ州は、トロントと、オタワが中心地で、オタワ周辺の方がオリエンテーリングは盛んです。とはいえ、500-600kmも離れているので、オタワ開催の場合は、なかなか行きづらいのです。

され、オンタリオ選手権の参加者数は、200人にも満たない小さな大会ですが、そのクオリティは素晴らしいです。特に、フォーマットにのっとった適切なコースセットが目を見張ります。ミドルは、テクニカルで、地図とのコンタクトを要求し、ロングはルートチョイスとタフネスさを問うコース。スプリントは、大学構内など、スピーディーで、細かいチョイスとマップコンタクトを要求。このメリハリは、日本ではなかなか見られない徹底ぶりでした。

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オンタリオ選手権スプリント、序盤1-5までのレッグは、本当に難しかった。世界選手権でも通用するレベル。

 

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オンタリオ選手権、ロング。タフさをベースに。ルートチョイスは少な目。

 

以上が、トロント周辺でのオリエンテーリングの機会です。これ以外は飛行機に乗って、他州の大会や練習会に行かなければいけません。私は、関東での生活しかしたことがないので、この状況はとても寂しいものでした。やはり、関東圏でのオリエンテーリング事情が如何に恵まれているかということですね。上に挙げた隣の都市のクラブというのも、100km以上ぐらい離れているので、関東から静岡や日光に行くぐらいの距離感ですし、関東圏というのは人が多くてよいです。

 

カナダオリエンテーリング事情

続いて、カナダのオリエンテーリング事情も紹介します。

人口:全体の人口は良くわかりませんが、カナダ選手権の参加者数は、400人ぐらいです。オリエンテーリングの人口自体はそれほど多くないのですが、そもそものカナダの総人口は、3600万人、関東平野の人口ぐらいです。人口比でいえば、同じような物かもしれません、物好きが発生する割合というのはそんなものなのかもしれません。

 

レベル:カナダでのオリエンテーリングについての事前情報といえば、世界選手権で、よく同じような成績を取っているなということぐらいでした。でも、いまは、差をつけられようとしています。女子のEmilly Kemp(Emily Kemp - World of O Runners)は、今年の世界選手権ミドルで4位になりました(最後の2レッグ前まではトップ)。とはいえ、彼女は北欧在住なのですが。

 

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カナダ選手権ミドル会場風景:完全なる青空会場。駐車場から2kmぐらい歩く。雨だったらどうなったことやら。ちなみに、熊スプレーは必携品。ロングのテレインでは熊が確認されたため、開催日の一週間前にテレインを変更するという徹底ぶり。それでもロングを開催できてしまうあたりに運営慣れ感がある。

 

f:id:orienadvent:20161128123227j:plain子守のため、妻のゴールを待ってから走ったので、スタートに10分ぐらい遅刻しましたが、20分ぐらいの差で優勝しました。でもカナダ人じゃないので、表彰対象外。商品だけもらいました。M35A。隣の人たちのでかさたるや。

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Western Canadian orienteering championship 2015 ロング:大したテレインではないが、ロングらしいルートチョイスとタフさを問う良いコース

 

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f:id:orienadvent:20161128111045j:plainWestern Canadian orienteering championship 2015のミドルの森と地図:とても難しくて楽しい森でした。北欧を走っているかのようです。湿地がないので、北欧よりも走りやすくてナビゲーションの喜びを味わえる素晴らしいテレイン。(2018年の北米選手権でも使われるようです。おすすめ!)

 

カナダオリエンテーリングの資金調達の工夫

カナダのオリエンテーリング人口は、日本に比べても少ないような気がするのに、参加費は、日本よりも安いような気がするし、その割には、素晴らしい地図と運営が提供されていました。資金源がどうなっているのか、わかりませんが一つの資金源として、ドネーション&オークション、ナショナルチームウエアの販売があります。

ドネーション&オークション

まず、参加者から不要になったものを寄付で集めます。その後サイレントオークション(紙に、買い取りたい額を書いていき、一番高い金額を書いた人が買いとる)によって、現金化しその収益を協会に寄付するというやり方です。カナダではメジャーなやり方のようで、娘が通っている保育園でも同様のドネーションを集めていました(実際には、企業に、寄付(商品券など)を募り、それを販売して収益を集めていた)。また、カナダのオリエンテーリングストアとして、O-storeというものがあるのですが、そこがナショナルチームウエアを作る代わりに、それを販売しその収益をナショナルチームに寄付をするというやり方でした(我が家も娘に一着買いました)。

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サイレントオークション:ほしいの物に、自分の名前と金額を書く。制限時間になった時に最高額を書いていた人が買い取る。お金は寄付へ。

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バンケットの様子、壁沿いに商品がおかれて、サイレントオークションが行われている。

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カナダのナショナルウエア・デザインがいい。さすがに私は着にくかったので、娘に購入。85ドル(6500円ぐらい)

 

 カナダに遠征するなら?

と、ここまでカナダのオリエンテーリングについて紹介してきましたが、実際に、オリエンテーリングをするためにカナダに来るか?と思った方のために。

日本からだと、北欧や東欧に遠征するのと同じぐらいの時間がかかります。なので、オリエンテーリング目的だと、カナダを選ぶのはなかなか難しいなと思うのが第一。でも、カナダの自然との組み合わせによる観光旅行はお勧めです。とくに、カナダの西側で開催されるカナダ選手権、もしくは北米選手権はおすすめです。たいてい、カナダ選手権と西カナダ選手権が連続した週末で開催されるので、その間を観光に使うことができます。カナダが誇るロッキー山脈は、山好きにはたまらない観光地だと思います。我々も、カナダに滞在する直前の2014年夏にカナダのウィスラー(バンクーバーオリンピック開催地)での大会、および、今年のカルガリーでの2016年夏のカナダ選手権に参加し、オリエンテーリングとロッキー山脈の雄大な景色を堪能しました。 

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スマホのカメラで、こんな感じ。現物を見るべし。Lake louise。

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この日は曇っていたので。暗いですが。良いところです。

 

 

まとめ

オリエンテーリングを始めてから、ヨーロッパ各国、中国、台湾など、オリエンテーリング遠征をたくさんしてきましたが、一か所に滞在し、その国のオリエンテーリング文化を堪能するという経験は初めてで、いろいろな経験・視点を得ることができました。カナダと日本のオリエンテーリング環境を比較することで、日本の良さもわかりました。まず、オリエンティアがいっぱいいる。特に、若い人が‼。オリエンテーリングなんてマイナーなスポーツだよね。と、思いますが、それでもカナダよりも多いですし、年中楽しめますし、毎週のようにオリエンテーリングの大会・練習会があるという環境はやっぱりすごいと思いました。

その一方で、カナダ・トロントのよかったところは、毎週水曜日にオリエンテーリングする機会があったということ。やっぱり、地域クラブたるもの、毎週のように顔を合わせる機会があるということ、オリエンテーリングの練習をすることがあってこそだと思いました。日本でそれを実現するのはなかなか難しいですが、何か工夫をしていきたいと思います。やっぱり、オリエンテーリングしたいですよ、平日も。だって、道路走るのはつまらないですから。帰国後、川崎~横浜北部を中心とした地域クラブを発足させたいなと思っています。平日夜に集まってオリエンテーリングをやるような活動を。

オリエンテーリングのために、カナダを訪れようと思う人はほとんどいないと思いますが、ぜひ、ロッキー山脈と合わせての遠征は良いものになるとお勧めできます。2018年の北米選手権はユーコンで開催されます。またたぶん2019、2020年あたりは、カナダ選手権がロッキー山脈のふもとで行われると思いますので、それも、おすすめです。

参考:North American championships @ Yukon 2018 August 17-22, 2018 (http://yukonorienteering.ca/naoc2018/

 

最後に

トロント・カナダのオリエンテーリング事情について書かせていただきました。長文でしたが、何か面白いなと思ったり、参考になる点などあれば幸いです。とりあえず、2年間離れていたので、日本でオリエンテーリングをするのが愉しみですし、日本のオリエンティアの人と話ができるのが待ち遠しいです。