JOAの理事になってみました。
こんにちは。はじめまして、宮川と申します。
タイトルは、「JOAの理事になってみました。」です。
これまで知らなかったJOA(日本オリエンテーリング協会)の世界に飛び込んだ話を、少しだけできたらな、と思い寄稿します。
1.はじめに
まずは、自己紹介です。
私はいわゆるオリエンティア2世で、子供の時から大会会場に連れられていました。
選手としてはJWOCやWOCにチャレンジし、インカレに熱を注ぎ、卒業して3年間は東大OLKでオフィシャルをしていた社会人4年目です。
今はES関東CとNPOトータスに所属しています。
運営はインターハイ(2013)、全日本スプリント(2015)、伊豆大島大会(2018)、AsJYOC(2019)はメインで関わっておりました。
次の春インカレでは競技責任者を務めます。
オリエンテーリングが好きで、楽しくて、ここまでやってきました。
気付けば、代表選手、大学生オリエンティア、コーチ、運営者といろいろな立場を経験しました。
さて、そんな自分が、今年の春に村越さん(全日本大会で歴代最多優勝回数を誇るレジェンド)から、JOAの理事をやってみないか?とお誘いを受けました。
聞けば、JOAの女性理事を探しているとのことでした。
その時は、なぜ女性理事が必要なのかも、わかっていませんでした。
2.自分はオリエンテーリング界になにができるか?
理事を引き受けるかは相当悩みました。
私はこれまで日本学連や関東学連の幹事でもなかったですし、学問的に何か優れたものを持っているわけでもありません。
仕事も新卒以来、営業(人が作ったものや人の仕事を売る仕事)をしており、自分はなにかを生み出せる人材ではないと思っていたから。
でも唯一、できるかもしれないと思ったことがあります。
それは、「つなぐこと」でした。
何度か、オリエンテーリングをやめようかと思ったことがありましたが、結局好きで続けてきました。
森の中での"あの感覚"がいつも忘れられず、週末自ら山へ足を運ぶようになって10年目になります。
この10年、オリエンテーリング界でたくさんの人に出会いました。
狭い世界です。
たしかにオリエンテーリング以外のコミュニティでの出会いは全く違う新しい発見を与えてくれて、私にとってとても大切です。
でもオリエンテーリングを通して出会った人たちは、いや・・これうまく言葉にできないんですが、何か特別で、何というか・・・好き???なんですよね。
たとえ、今はオリエンテーリングをやっていなくても、それでも、です。
過去4年間のAdvent Calenderでもたくさんの言葉でオリエンテーリングが綴られています。
Advent Calenderに綴られているような、それだけではなく過去も今も多くの人から注がれた、たくさんのオリエンテーリングへの愛を、つなげられたらいいな、と思いました。
本当は、もっと明確なビジョンを持って飛び込みたかったです。「この組織の課題は何で、こんなプランを持ってすれば解決できるのだじょ!」、とか。
でも自分の中で腑に落ちたのは、その1点(つなぐこと)でした。
様々なスゴイことが出来る人たちがまわりにたくさんいるので、そんな人たちと日本のオリエンテーリングを作っていけたらと思って、結果的には飛び込むことにしました。
3.そもそもJOAってなに?
JOAの理事に誘われるまで、あまりJOAのことを知らなかったです。
①JOAへの疑問:JOAってどんな組織なの?
②理事への疑問:理事って何人いるの?何をする人なの?
③その他の疑問:全日本大会って今後どうなるの??
JOAってなんだか雲の上の存在でした。
よくTwitterなどで「JOAはうんぬんかんぬん」という批判を目にしますが、普段呼んでいる「JOA」ってなんぞや?というのを私は分かっていませんでした。
箇条書きではありますが、これまでに知った「JOAとはなんぞや」、という部分を書いてみます。
参考:http://www.orienteering.or.jp/joa/
・JOA(日本オリエンテーリング協会)は「公益社団法人」です。
日本のオリエンテーリングを代表する中央組織で、毎年厳しい審査を通り内閣府から公に益する事業をしていると認められています。
・日本でオリエンテーリングを事業として掲げられる公益社団法人はJOA以外に認められていないので、JOAが日本一と決めたチャンピオンは、「日本」の中で「オリエンテーリング」の競技で(当該年度にその種目で)頂点であると認められることになります。
・IOF(国際オリエンテーリング連盟)や日本スポーツ協会、JOC(日本オリンピック協会)の承認団体として加盟をしています。縦や横のつながりもしっかりしております。
これらの組織に加盟しているから、世界選手権に選手が派遣できたり、国際大会を日本で開催することになったり、東京オリンピックの候補種目として手を挙げられたりします。
要は、日本のオリエンテーリングを代表する組織だと社会から認めてもらっている、のがJOAです。
・2019年6月に岸記念体育館からJAPAN SPORT OLYMPIC SQUAREに事務局がお引越しになりました。他の競技団体と共有ですが、オリエンテーリング協会のスペースを持っています。
・ 事務局には事務局員がおります。時給を支払ってます。JOAの事務作業を担う役割で、会計業務や広報業務など、様々な事務仕事を担っていただいています。
誰かが「オリエンテーリング協会に問い合わせをしたい」と思った時に、電話を取ってくれる人がいるというのも対外的に見れば大切な役割です。
・事務局が”主務”なら、理事が”主将”です。
理事は、組織全体の事業方針を決めていきます。そして、その実行部隊が「委員会」です。ちなみに、事務局員以外は無報酬です。
・まずは委員会から。2019年12月時点で18の委員会があります。
専門分野に分かれて、3~8名程度で活動しています。
★委員会の代表例
競技委員会:日本の競技規則を策定する、イベントアドバイザーを派遣するなど
強化委員会:日本代表選手を派遣する、選手強化をするなど
地図委員会:日本の地図規則を策定するなど
他にも、スキーO/トレイルO/MTB-Oの各委員会や、女性委員会、地域活性化委員会、国際委員会などがあります。
・そして、理事です。理事・・というか「役員」の中でも役割が決まっています。
JOAのトップ(会長)は山西先生です。よく全日本大会でメダルを授与してくださるおじさまです。ランニングの伝道師です。
参考(写真も拝借しました):https://runnet.jp/award/detail_n30.html
・そして、副会長が2名、業務執行理事が5名、理事が11名という構成です。
組織構成:http://www.orienteering.or.jp/joa/organization.php
日本学連がJOAに加盟してからは、日本学連の幹事長がJOAの理事になっています(藤本くん)。理事の中で若手と呼ばれるのは、藤本くんと、東大OBで2年前に日学幹事長だった瀬川くん、そして私です。
・理事は、地方ブロックの代表+学識経験者+日本学連からの選出で構成されています。私は首都圏Bブロックの代表で、JOAの理事になるタイミングに神奈川県協会の理事にもなりました。
というわけで、JOAの内部組織は「理事(役員)」、「委員会」、「事務局」に分かれており、それぞれ、理事は方針を決める、委員会は各専門分野で事業を実行をする、事務局は業務を円滑に回す、という役割のもと動いております。
これまで、運営者や競技者として、オリエンテーリングを愛好しているだけでは知ることができなかったのは「社会・スポーツの中でのオリエンテーリングの地位」を守るために、JOAの方々は多くの力を注いでいたということでした。
誰かひとりの力ではきっとなしえなかったことだと思いますし、心から敬意の念を表したいと思っています。
でも、残念ながら、その対外的な地位をまだまだ活かしきれていないのが現状で、だからこそ、年間5,000円の競技者登録をしている私たちにとって、メリットが感じられない・競技者登録をする意味が分からない、という事態になってしまっているのだと思います。
4.みんなオリエンテーリングが好きなのに
先から書いているように、私はJOAが雲の上の存在であると思っていました。
おかみの存在で、そこで代表選手の選考方針が決まったり、全日本の日程・開催場所が決まったり、様々な規則が決まったりしていると思っていました。
でも実際入ってみて、他の理事や委員長の方々とお話すると、こんな声をよく耳にします。
①若手の意見をどんどん出してほしい
②後身がいないから自分がやっている
あ、おじさま方は若手のことをもっと知りたいんだ、というのは発見でした。
先日、副会長の愛場さんから頂いたメールの中には、こう綴っていただいています。
これからのオリエンテーリング界を背負って立つのは皆さんの世代です。
より広く、多くの人が、オリエンテーリングを楽しくできる環境を作ってゆきたいと思います。
そのために、是非力を貸してください。今後とも、ご協力のほどをよろしくお願い申し上げます。
私がこれまで感じていた、JOAと競技者との溝。
「競技者のことを分かろうとしないJOA」だけではなく、「JOAのことを分かろうとしない競技者」もいたのではないかと、そう感じています。
感じているのは、競技者との溝だけでなく、事業者との溝もしかりです。
オリエンテーリングで生計を立てて行こうとしている方々との棲み分けを明確にして、しっかりその方々が「食べていける」ようにする環境づくりも必要です。
みんな、オリエンテーリングに対して時間・お金・人生・愛を注いでいるのだから、それらをつなげて、未来のオリエンテーリング界の仕組みを組み立てていくのが今の目標です。
と、だいそれた&照れくさいことを書きましたが、そんな大きな話、私や理事の力だけでは到底できるものではありません。過去の取り組みを振り返り、たくさんの人と協力しながら、ひとつひとつ、役割分担をして進めていけたらと、思っています。
5.これから進む先は
かつて私の母が所属していた、筑波大学オリエンテーリング部の活動方針ページ(http://tsa.tsukuba.ac.jp/orienteering/activity/)にこんな記載があります。
スポーツには勝利至上主義としての「チャンピオンスポーツ」の側面と、みんなのスポーツとしての「一般体育」の側面があり、どちらも欠かせない視点として重視していますが、さらに「支える側のスポーツ」として大会や対抗戦の運営、地図調査にも取り組んでいます。
オリエンテーリングには、3つの価値(選ばれる理由)があると思っていて、それを要約してくれているのがこの文章です。
昨日、濱宇津が綴った、紺野晃氏が広めた日本のオリエンテーリングの世界。
チャンピオンスポーツも、支えるスポーツも、全てを包括した「みんなのスポーツ」というオリエンテーリングの文化。
そこに至るために、JOA、事業者、都道府県協会、地域クラブ、大学クラブ、中学・高校クラブと共に、みんながオリエンテーリングを楽しみ競い合う場が続くことを願って、これからも進んでいこうと思っています。
さて、理想ばかり語っていても仕方ないので、JOAでやろうとしていることを書いておきます。
まずは、新たにアスリート委員会の設立を進めています。
JOAと競技者が少しでも近くなるよう、寺垣内さん、堀田さんの力をお借りして、委員会の方針を固めようとしているところです。
近々、一部の選手の方々にも声をかけさせていただく予定です。
公認大会・全日本大会の再編も考えてはいますが、これまで多くの人が悩み考えチャレンジしていっても、お金/理想/インカレとの差別化、他様々な要因から、形が出来ているとはいえない状況です。
冒頭に書いた、女性理事が必要な理由は、JOAはスポーツ協会の中央組織に日本スポーツ協会から課せられているガバナンスコードに基づいて組織形成を行っているのですが、その中に女性理事40%以上という目標があるそうなのですね。(厳しい)
なかなか厳しい目標ではありますが、多様性を求めるという点では参考になる考え方かと思っています。理事は難しくとも、委員会レベルから、新しい風を吹かせていきたいです。
若輩者ですが、ぜひたくさんの人たちと楽しみながら、創っていけたらと思っています。
It's all about Orienteering.