オリエンテーリングを多くの人に知ってもらいたい
オリエンティア Advent Calendar 2024 23日目
2024年12月23日 木村佳司
この記事はオリエンティア Advent Calendar 2024の23日目の記事です。
こんにちは、木村佳司(きむらけいし)です。長野県オリエンテーリング協会で活動しています。今は公益社団法人日本オリエンテーリング協会 デフリンピック委員会の委員長を行っています。今回は「なぜデフリンピック委員会やっているのか」について書かせていただきます。
オリエンテーリングを多くの人に知ってもらいたい
「オリエンテーリングって世間では知られていないね」・・これを読んでいる人はみんな感じてますよね。でも知ってもらったら、私たちオリエンテーリングファンはもっと楽しいですよね。
オリエンテーリングを多くの人に知ってもらうにはどうすればよいか? まずは手っ取り早く露出の機会を増やさなくは始まらないです。オオタニサーンの大記録がこれだけ話題になるのは、メジャーリーグ試合の放送が行われたり、各種メディア記事で取り上げられたりしてとにかく露出の機会が大きいことが基本にあります。
マイナースポーツがとる戦略は
野球・サッカーのようなメジャースポーツはTVやネット中継で充分にメディア露出しています。でも全くメジャーではないオリエンテーリングは、メディアが集まるスポーツイベントに潜りこんでなんとかメディア露出を狙う作戦に出ます。たとえばオリンピックとか。本当はオリンピック競技になりたいところですが、なかなかオリンピックへのハードルは高いです。オリンピックほどではないにせよ、他にもメディアに取り上げられるスポーツイベントがあります。国別対抗の総合競技大会です。
実はいろいろある総合競技大会
・オリンピック
・ユースオリンピック(14歳-18歳)
・ワールドユニバーティゲームズ(大学生)(旧ユニバーシアード)
・ワールドマスターズ(30歳以上)
・ワールドミリタリーゲームズ(軍人)
・アジア大会(アジア地域のみ)
・パラリンピック(障碍者のみ)
・デフリンピック(ろうあ者のみ)
いずれの総合競技大会も、数年毎に開催され、ホスト都市周辺ですべての競技が行われています。開会式と閉会式に各国選手団が登場して、派手なセレモニーが行われます。
実際に私も現場で見た総合競技大会の例をご紹介します。
ユニバーシアード2019冬季大会の開会式
日本選手団は47:45あたりから登場します。あの選手団の中に私もスキーオリエンテーリングのチームオフィシャルとして開会式を歩きました。同じ日本チームの中にはフィギアスケート、アイスホッケー、アルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロンなどさまざまな競技の選手と役員がいました。
話が少し横道にそれますが、2025年1月にワールドユニバーシティゲームズ(旧ユニバーシアード)冬季大会がイタリアのトリノで開催され、スキーオリエンテーリングが実施されます。日本からは高野澄佳(女子)、寺嶋謙一郎(男子)の2選手が出場予定です。スキーオリエンテーリングの競技日は1月21日と23日です。応援お願いします。
話を戻しましょう。上記の総合競技大会のうちフットオリエンテーリング競技が行われるのはこちらです。
・デフリンピック
・ワールドマスターズ
・ワールドミリタリーゲームズ
ワールドミリタリーゲームズには日本は参加していません。日本に軍隊は無いことになっているから・・らしいです。
そこで私たちがいま注目するのが以下の2つの総合競技大会
・デフリンピック
・ワールドマスターズ
いずれも2025年と2027年に日本で開催されます。
オリエンテーリングも総合競技大会の正式競技になることで、メディアへの露出が増えることが期待できます。それが自国開催となればなおさらです。
何もしなければ衰退する
総合競技大会の種目になると、一気にメディアへの露出が増すのか? そんなことはありません。でも何もしないよりは少しはメディア露出します。あとはそれをどれだけ私たちが利用するかです。
何の活動でもそうですが、仲間を増やす活動を行わなくなった瞬間から衰退してゆき、いずれ消滅します。仲間を増やす活動にはいろいろありますが、そのひとつの手段がメディア露出です。
意外と残るレガシー
総合競技大会を実施すると、その記録、その記憶は10年程度は残ります。総合競技大会に関わる人って意外に多くて、オリエンテーリングをやったことのない人でも「デフリンピックではオリエンテーリングってやっていたな」という記録と記憶は残っていきます。少なくともオリエンテーリングという文字を見る機会が増えます。このスポーツをやってみようと思う人が一人でも増えることを願っています。
東京2025デフリンピックでは
オリエンテーリングが正式競技として実施されます。競技実施予定日はすでに発表されています。2025年11月15日(土)、16日(日)、20日(木)、21日(金)、23日(日)が競技日で、その合間に練習日があります。
競技会場は日比谷公園と伊豆大島の2か所で実施されます。日比谷公園がオリエンテーリング競技会のテレイン(フィールド)になることは滅多になく、さすが東京2025デフリンピックです。
デフリンピック会場の報道としてはTOKYO MXのニュース動画が判り易いです。
オリエンテーリングも注目されていますね。
注目は2025年11月15日
11月15日は東京2025デフリンピックの開会式の日です。この日に競技が行われるのは、サッカーとオリエンテーリングだけです。サッカーは予選から始まって閉会式直前にメダルが決まるのが通例です。そうなるとデフリンピック最初の金メダルはオリエンテーリングになるかも知れません。多くのメディアがオリエンテーリングを報道してくれることを期待しています。そんな報道があったら、オリエンティア皆さんによる情報拡散をどんどん行っていただきたいです。
国際総合競技大会は楽しい
なによりも国際総合競技大会は楽しいです。いろんな国やいろんな競技やいろんな関わりかたをしている人たちが集まり、競い、交歓する。単純に楽しいです。皆さんもデフリンピックに関わらずいろいろな国際大会に積極的に参加してみてください。きっと思った以上の世界が見えてくると思います。
そして東京2025デフリンピックのオリエンテーリング実施にご協力いただけると嬉しいです。実際に会場に足を運んで選手を応援していただけるだけでもいいです。
東京2025デフリンピックでは21の競技が行われます。その競技の中にオリエンテーリングも入っていて、紹介されています。
あらためて東京2025デフリンピックについて
まずデフリンピックとは
・耳の聞こえないアスリートのための(参加者3000人)
・国際マルチスポーツイベント(70-80国地域)(21競技)
・4年に1回開催
・100年前から開催(オリンピックは128年前)(パラリンピックは76年前)
・オリエンテーリングを毎回実施
・2025年日本で初開催
そして東京2025デフリンピックとは
2025年
11月15日 開会式(東京体育館)
11月26日 閉会式(東京体育館)
ビジョン
1.デフスポーツの魅力や価値を伝え人々や社会とつなぐ
2.世界に、そして未来につながる大会へ
3.“誰もが個性を活かし力を発揮できる”共生社会の実現
この舞台で躍動するオリエンテーリング選手に注目してくださいね。
自己紹介・略歴
木村 佳司(きむら けいし)
長野県オリエンテーリング協会 / JOAデフリンピック委員会委員長
1962年2月14日 広島県福山市に生まれる
1978年 地元アマチュア無線クラブで地元徒歩オリエンテーリングに参加。そのとき個人クラスがあることを知る。オリエンテーリングに興味を持つ。
1980年 山口大学オリエンテーリングクラブ入部。1年生で中国学連大会で優勝。
大学1年生で初インカレ、初全日本大会参加。初全日本大会はいきなりEクラス出場(当時は20Eなどのジュニアエリートクラスなし)
大学時代から自主企画の大会を開催
1984年 テレイン豊富な長野県に就職。テレイン目当ての山川氏にスカウトされて学連評議員から学連理事へ。
その後は愛好家として活動すると同時に、オリエンテーリングと社会の関係に興味を持ち、各種メディアの主宰や各種組織、各種イベントに関わる。
2022年 38年勤めたメーカーを定年退職し、自主活動できる時間が増える。
2023年 JOAデフリンピック準備委員長に就任。
スプリントコース組みポイント18選
オリエンティア Advent Calendar 2024 22日目
こんにちは。上尾OLC所属の桃井陽佑です。
この度、お声がけをいただき、アドベントカレンダー22日目を寄稿することとなりました。
私はオリエンテーリングの中でも、とりわけスプリント競技が好きです。
また、今年度はインカレスプリント2024のコースプランナーを務めたため、「色々なスプリントコースに目を通して、良いアイデアを見つける」という事をずっと行っていました。
加えて、インカレスプリントのアイデアを得るために、WOC2024にも足を運んでしまいました!(エディンバラ最高なところでした!)
そこで本記事では、そんなスプリント好きな私の考える、スプリントのコース組みポイント18選を紹介できればと思います。
特に、以下のような方に見てもらえたらとても嬉しいです!!
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スプリントのコースプランナーを任されたが、良い組み方がよく分からない人
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パークテレインでパークOではなく、「スプリント」のコースを組みたい人
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オープンメインのパークテレインでコースを組むことになった人
それでは、よろしくお願いいたします!
自己紹介
改めまして、桃井陽佑と申します。
慶應義塾大学2016年入学で、大学からオリエンテーリングを始めました。
大学時代はKOLCの仲間達とオリエン漬けの日々を過ごしました。
特に陸上部出身でアスリート脳だった自分は、慶應同期のオタク達や、強烈な個性を持つ仲間達、魅力ある先輩方に触発されて、立派なスプリントオタクへと成長(?)しました。
その甲斐あってか、インカレスプリント2018では優勝することができました。
現在は、上尾OLCに所属してパークOを無限に運営する傍ら、KOLCのコーチも行い、自分が先輩から学んだことを、後輩へ継承する活動を頑張っています。
また、最近は仕事に慣れてきたので、競技復帰にも力を入れており、直近のスプリント日本ランキング(for全スプ2024)は10位で終えることができました。
やっぱり、本気で取り組むオリエンテーリングは人生で一番楽しいと感じます。
スプリントコース組みポイント18選
早速ですが、本題に入ります。
9年間スプリント競技に、「競技者・コーチ・コースプランナー・オタク」として関わる中で、「これは皆に共有してみたい!」とビビっと来た、「スプリントのコースを組む上でのポイント18選」を共有しようと思います。
ぜひ、スプリントのコースを組む際に参考にしてみてください!!
【1】方向性
【2】コース組み初期段階
【3】基本編
【4】応用編
【5】人工柵
の5章立てで、計18個のポイントを共有します!
【1】方向性
①課題は「ルート選択」に寄せる
これは基本ですし、とても大事です!
「IOFのスプリントコース設定ガイドライン」(以下IOFガイドライン。同期で上尾OLCの茂原が日本語訳してくれてます)では以下の通り記載されています。
-
スプリント競技とは、ルートチョイスを検討し実行する能力を測るものである。
-
コントロールを見つけることを課題とすべきでない
つまり、スプリントのコースは「ルートチョイス」を問うものであるべきであり、「フォレストのようなナビ」「難易度の高いアタック」は課題として適切でないという事になります。

このような「フォレストナビ」の課題をメインとするコースはスプリントでない

このような、「右か左か」といったルートチョイス課題がメインとなるのがスプリント
キャンパススプリントや市街地スプリントは、適当にコースを組むだけで自然と「ルートチョイスが課題となるスプリント」に仕上がると思います。
問題はパークテレインの場合です。
オープンが大半を占めがちなパークテレインでは、適当にコースを組むと、「ルートチョイスがない、簡単なナビゲーション課題がメインのパークO」になりがちです。
なので、公園の中でルートチョイスが作れる「光る原石エリア」を見つけ出すことが重要です。

②ルート実行まで問う
上記①でスプリントにおけるルートチョイスの大切さは説明しました。このルートチョイスの課題に、「選んだルートをナビゲーションして実行する」という課題が加わると、さらに良いレッグに仕上がります。
IOFガイドラインに以下のような記載があります。
-
スプリントは、競技者の複雑な環境下での地図の判読力、高速度のランニング下でルートチョイスを検討し、それを実行する能力を計るものである。
-
コースは、選手がレースを通して常に高い集中力を要求されるよう組まれるべきである。
つまり、スプリントはルートチョイスだけでなく、「選んだルートの実行」までを問うのが望ましいということになります。
選んだルートの実行まで問われるようなコースは、走者の頭の中がとにかく忙しくなります。そのような中、高い集中力を発揮し、適切な判断をし続けられた選手が上位に来るコースが、良いスプリントのコースという訳です。
なお、個人的には、実行は「特段難しすぎないが、地図は読んでないとミスる」くらいの塩梅が作れればOKだと思ってます。

ルートチョイスは面白いが、実行の過程で「ただ何も考えず走るだけ」の区間が多く、集中力は要求されない

インカレスプリント2024はルートチョイスだけでなく、その後の実行も問うように組みました。走ったエリート選手は、相当頭の中が忙しくなったと思われます。
【2】コース組み初期段階
③初期段階こそクレイジーなアイデアを考える
皆さん、コースを組み始めるとき何から考えるでしょうか?△-1でしょうか?スタートとゴールを考えるところからでしょうか?
個人的には、最初はクレイジーでぶっ飛んだアイデアを考えるのがオススメです!
(これはIOFガイドラインにも軽く記載がありました)
なぜなら、コース組みの初期段階は、「スタート/ゴール、他のレッグとの兼ね合い」といった制約がなく、完全に自由な発想でレッグを作れるからです。
ここで思いついた自由なアイデアは、後々コースの肝レッグになっていくことが多いです。


④テレインの面白いところを把握する
コース組みの初期段階では、「テレインの面白いところを把握する」という作業も大事です。
これは、上述した「光る原石」を探すために、パークではかなり重要となってきます。市街地やキャンパススプリントでも、しっかり「テレインの面白いところ」を把握できれば、「右か左か」といった単純なルートチョイスでなく、複雑で面白いルートチョイスがある、ワンランク上のスプリントコースが組めます。

テレインの面白いところを使って作った1-2
テレインの面白いところの探し方は簡単です。「とにかく適当なコースを組みまくる」に尽きます。最低5個、できれば10個以上コースを組んでみると、「ここ意外と面白いじゃん!」という所が発見できます。
これはスプリント対策で予想コースをよく組む人には共感してもらえると思います。
私の体感では5個以上、自分で予想コースを組むと、テレインの攻略ポイントが分かってくるように思います。コースプランナーがどんな事を考えそうかも想像がついてきます。
ちなみに私は、この「テレインの面白いところ」を見つけることがとても好きです。一見面白くないパークテレインで、光る原石を繋ぎ合わせて、面白いスプリントのコースが組めた時は最高です。上尾OLCでのパークO運営でのやりがいの一つです。
【3】基本編
⑤連続して負荷をかける
何かしら課題があるレッグを連続して配置すると、走者は余裕がなくなり、集中力が求められるコースになります。
課題は以下のようなものが挙げられます。
-
ルートチョイス(望ましい)
-
スプリントナビゲーション
-
フォレスト風ナビゲーション(できれば避けたいが、少量ならパークOアクセントとしてあり)
-
アタック(できれば避けたいが、少量ならパークOアクセントとしてあり)
※パークOアクセントは後述

今年の千葉大大会2024のコース。連続して負荷がかかっている良いコース。フォレストやパークの課題が良いアクセントとなっており、個人的に好き。
⑥脱出からルートを問わせる
スプリントはいかに先読みを上手くこなして、スピードを落とさず走り続けられるかが大事です。そのため「先読み力」を問うレッグが多いコースは、良いスプリントコースだと思います。
この「先読み力」を問うためには、「脱出時点からルートを問わせるレッグ」を作るのが有効です。
また、走者のアタック方向から、方向転換が求められるルートがベストルートだと、なお良しです。(いわゆる逆脱出)
この場合、走者が先読みをできていないと、絶対にベストルートは取れません。

インカレスプリント2024では、ほぼ全てのレッグで、逆脱出が求められるように組みました
⑦ルート勝敗を明確にする(30m)
ルートチョイスのあるレッグを作った場合、ルートごとの勝敗を明確にすることは重要です。右を選んでも、左を選んでもルート距離が変わらない場合、ルートチョイスする価値が低くなってしまいます。
では、勝ちルートと負けルートの差はどのくらい付ければよいのでしょうか??
これは、IOFガイドラインで30mと明記されています。
キロ4で走行している場合、30mは走るのには7.2秒かかる計算になります。
スプリントで7秒ミスはかなり痛手です。ルートチョイスとしても十分機能しています。
コースプランナーの方は、OCadやPurplePenで、地道に線を引いて、ルート計測する作業が重要になります!

自分はPurplePenを愛用しています!立禁線でルート距離を計測しています。
⑧複雑なルート同士のルートチョイス
ルートチョイスを作る際は、「ただ右か左か」といった単純なルートチョイスでなく、「複雑なルート同士のルートチョイス」を作ると面白いです。

第115回上尾OLC大会in内牧公園より
例えば、上記の画像で言うと、↓のような比較となります。
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大回りな水色ルート
-
大回りはしないが、奥まで行って引き返す青ルート
このようなルートチョイスは、「複数のルートを比較検討する必要性」が生じるため、走者に読図を求めることができます。
ルートを一目で見ただけで「これは他のルートと比較するまでもなく、速い!」となるような「絶対的に速いベストルート」を作るのではなく、「距離が伸びて遅そうだが、他のルートと比較して速いかな?」という「相対的に速いベストルート」を作るとよいです。
【4】応用編
⑨ロングレッグ
自分はスプリントのロングレッグが非常に好きです。スプリントはルートチョイスを問う競技であるため、ルートにより大きくルート距離の差が出るロングレッグは、スプリントと相性が良いと思います!走者の決断力を問うこともできます!
自分はスプリントのコースを組む際は、「どこかにロングレッグを入れられないか?」をまず考えるようにしています。


⑩逆脱出コンピ
コンピは丁寧な読図と実行を走者に課すことができるという点で良いです。
ここに、⑥で紹介した逆脱出を加えると、競技者へかなりの読図負荷をかけることができます。
上述した⑨のロングレッグと組み合わせるなどして、レッグ長に緩急をつけられるとgoodですね。

第109回上尾OLC大会in熊谷ラグビータウン の逆脱出コンピ

⑪面白いエリアを複数回使う
テレイン内で面白いエリアを見つけることの大切さは④でお話ししました。この中で「特に面白い!」と感じたエリアは、コースの中で何回も使ってあげると良いです。
これは、「平凡だが、一部分、非常に面白いエリアが存在するテレイン」で特に有効です。
「コースの序盤と終盤」といった感じで、「1回入って、また戻ってくる」という風にコースを組むと、走者側も飽きが来なくてよいです。

⑫エリアの乗り換えが発生するルートは見づらい
スプリントではルートを把握する際、基本的に「同じ特徴物で繋がっているルート」が一番最初に目に入ってきます。(舗装路で繋がっているなど)
一方、「エリアの乗り換えが発生するルート」はあまり目に入ってきにくいです。(舗装路→オープン→舗装路など)

ICS2015in富士見高原リゾートより 名レッグ5-6
例えば上記の5-6の場合、パッと見すると、舗装路で繋がっている(5ポから見て)右ルートが一番最初に目に入ってきます。4の数字を経由する左ルートは、「舗装路→オープン→舗装路」とエリアを乗り換えているからか、よくよく地図を見ないと入ってきません。
このような、「エリアの乗り換えが発生するルート」をベストルートにしてあげると、「ベストルートを見抜きにくい良いレッグ」になります!

ICS2024の5-6は、「S字に舗装路が繋がっているルート(7ポ経由)」が強烈な存在感を放つため、最初にこのS字ルートが見える
⑬致命的ワーストルートを適宜入れる
スプリントではベストルートを選び続けるより、ワーストルートをいかに回避し続けるかが重要です。また、上手いスプリント選手は目の前のレッグに対して常に、「このレッグはまずいワーストルートが潜んでいるか?」と危険判断を行い、スピードコントロールをしています。(OKなら読図せずにスピードアップ。NGなら読図集中)
上記のようなスピードコントロールを走者に問うために、コースの中に「致命的なワーストルートのあるレッグを適宜入れる」と良いです。

ICS2018in駒ヶ根 致命的なルート差が付かないレッグが続いていたところ、13-14で致命的ワーストルートの罠が配置されている(13から見て左ルートが遅い)
⑭アクセントとしてのパークO課題
スプリントは基本的に「ルートチョイスがメイン課題である」と①で話しましたが、パークO課題をたまに差し込むと、アクセントとして良いです。
パークO課題とは、↓が該当します。
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フォレストエリアのナビ
-
藪などへの少し難しいアタック
パークO課題はスプリントの本質からは逸れますが、「1:4000でフォレスト風のナビゲーションをする」という点で、それはそれで難しいです。(なんなら自分は大好物です)
色々な課題に対応する力を問うという点で、スプリントコースの中にパークO課題を差し込むのは、自分はアリだと思います。走っている側も楽しいです。
ただし、藪に突っ込んだり、難しい穴などへのアタックを要求したりなど、「スプリントのスピード感」を損なうレッグは注意が必要です。
また、インカレスプリントや全スプなどで、IOFガイドラインに準拠してコースを組みたい場合は慎重に考えるべきかもしれないです。

⑮地図理解を問う
スプリントが速くなるためには、「スプリントの地図図式」を完全に理解して、迷いなく地図を読める必要があります。(ISSprOM2019-2の立体交差記号(▲▲▲)が直感的に分からない人は要注意!)
そのようなスプリントの地図図式への理解を直接問うようなレッグも、アイデアとしては面白いです。

インカレスプリント2018in駒ヶ根 稲森選手が迷いなくスプラッシュしたと伝わる通行可能池の向こうの1ポ

インカレスプリント2022in富士見高原リゾート △-8は通行可能崖への地図理解が求められる
⑯脱出先行き止まり
先読みを問わせる方法の一つとして、「流れで脱出した場合、先を行き止まりにしてしまう」という手法もあります。「先読みができておらず、かつ行き止まりのリスクがあるのにも関わらず進んでしまう人」は振り落とされてしまうレッグです。
競技者側としては、上記⑬でも触れた「致命的ワーストルートへの危機察知」が重要になります。

秋田大会2024 Day1のスプリント 2-3は典型的な脱出先行き止まりレッグ

設楽オリフェス2024 Day1 9-10で行き止まりあり
⑰隙間ルートファインディング
道に立禁をかけた上で、実は隙間に抜け道を用意しておくというパターンです。
下記の4-5が例になります。

インカレスプリント2024 4-5
一見、ルート距離変わらないし立入禁止かけた意味がないのでは?と思われるかもしれません。しかし、これを行うと、⑫で説明した「エリアの乗り換えが発生するルートは見づらい」が発動して、一気にルートが見つけづらくなります。
今年のWOCノックアウト決勝や、ユニバースプリントにこの手法が用いられていたため、インカレスプリントでも取り入れてみました。


【5】人工柵
⑱人工柵は「柵先行か、レッグ先行か」で試行錯誤
みなさん、コースプラン中に人工柵を設置するのは得意ですか?あれ難しいですよね。自分はセンスが必要だと思ってました。
人工柵は下記の「柵先行orレッグ先行」で一旦置いてみて、なんか違ったらやり直す、を繰り返すのが有効です。物量作戦でセンスのある人工柵を置きましょう。
(1)柵先行
一旦人工柵を置きたいところに置いてみて、その後にそれを活かすレッグを作るという流れです。
「道などの線状特徴物の形が面白い!」という場合に有効です。それ以外にも自分の中でアイデアがあるのであれば、まずは置いてみると良いです。

インカレスプリント2024の19-20付近の人工藪は、道の形が面白かったので、「柵先行」で最初に人工藪を設置して、後からそれを活かすレッグを考えました。

JWOC2015の14-15付近の面白い人工柵は柵先行タイプと思われます

ICS2020in那須野が原公園 15-16付近の人工柵は恐らく柵先行タイプ
(2)レッグ先行
作りたいレッグを用意して、そのレッグをより良くするために、後から人工柵を設置する手法です。
勝負レッグなど、作りたいレッグの形や回しが事前に決まっている場合に有効です。

インカレスプリント2024
上記の2ポ付近の駐車場魔改造は、15-16というレッグを先に作って、14の数字左を経由するルートが最速になるように、人工柵を調整して他のルートの距離を伸ばしました。
最後に
以上で、私の考えるスプリントのコース組みポイント18選の紹介終了です!
スプリントのコース組む際に参考にしてもらえると幸いです!
ここまで読んで下さりありがとうございました。
