筏場国有林誕生秘話
はじめに
気づいたら12月23日、2018年ももう終わりですね。Advent Calendar23日目担当、横浜国立大学4年の伊藤樹(KOLC)です。今日は2018年オリエンティアに最も衝撃を与えたと言っても過言ではない、「筏場国有林~神さびし山の葵~」のテレイン誕生秘話について書きたいと思います。少々KOLCの内輪話になってしまう部分もありますが、それもまた一興ということで気軽に読んでもらえるとありがたいです。
基本情報
筏場国有林は静岡県伊豆市で開催された第7回KOLC大会のテレインとして新規調査しました。
調査期間
2016年2月~2018年5月
30日間(288人日)
Itsuki…7回大会調査責任者、調査皆勤賞!
Kamizima…7回大会作図責任者、作図オタク、巨匠
Wdk…元KOLCの歩くご意見番、他人の作図に厳しい、自分に甘い
Ishi…KOLCのアイドル、調査中毎朝早起きしてお米炊いてくれるいいやつ
Tzw…マウント、最近某地域クラブでキャラを確立し始めている
Inamori…7回大会運営責任者、オリエンテーリング大好き
他にも多くの方々に調査してもらいました。
KOLC調査は、調査責任者が全てのエリアを作図する方式ではなく、各々が調査したエリアをそれぞれが作図して後でくっつけるという方式を取りました。こんな感じにエリア分けしてました。
エリアごとに見比べてみると、コンタがきれいだったりあんまりだったり、特徴物がぐちゃっとしていたり…やっぱり調査者のクセが出てしまっています。できる限り僕と上島で修正したんですけど…
いい所もあって、現地を一番知っている人が作図するので各々が現地をベストに表現してくれました。
初調査 いざ、筏場
2017年2月14日、初調査とあって胸が躍りました。行きの伊豆スカイラインでの絶景は今でも覚えています。
しかし、僕らを待ち構えていたのは超絶微地形テレイン…基盤地図情報のみの地図をもった僕らには調査どころの騒ぎではありませんでした。森に入るなり「わけわかんねー」ってなって、仕方なく目の前に広がる無数のコブをGPSでひたすら捕捉していました。二日目以降も地形のイメージが掴めなくて、ピークとピークを行ったり来たりして頭を抱えてました。ちなみに調査講師として西PROをお呼びしていたのですが、西PROは「えぐい勢子辻だね」とか言いつつサラッと作図していました。
中でも一番しんどかったのが、宿からテレインまで車で30分以かかる+炊事ができない宿だったことです。朝6:00起き+三食加工食品は流石に堪えました。
初調査の感想は「西PROすごい」「筏場やばい」「後先真っ暗」って感じでした。
筏場公会堂、伊豆ワイナリーヒルとの出会い
第1回調査後渉外が進み、第2回調査以降はテレイン近くの「筏場公会堂」という施設に宿泊できるようになりました。ここでは、炊事をすることができました。また、「伊豆ワイナリーヒル」という温泉宿を発見しました。回数券を使うと一回300円で入ることができて、設備も充実している神温泉でした。筏場の岩で心身共にボロボロになって帰ってきても、これらが充実していたおかげで調査合宿のホスピタリティが格段に上昇しました。何を言いたいかというと、宿、食事、温泉はめっちゃ大事!ってことです。
炊事エピソードでよくKOLC内で話題になっていたのが、「シチューをご飯にかけるのは有りかどうか」です。僕は断然かける派です。かけたことない人は、一回やってみてください。
進まない調査、焦り、CS立体図との出会い
宿、食事が充実していく一方で、調査の進行状況は芳しくありませんでした。調査に慣れてきたものの、一日にコンタ2,3本書くのがやっとでした。
そんな時、発見したのがCS立体図です。
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/shizuokakencsmap2
CS立体図は基盤地図情報を基にして作られた地形表現図で、地形が立体的に表現されているんです。現地の小さい段差も、よく見るとCS立体図に載っていて調査中リロケしやすくなりました。
このCS立体図を調査板の下絵に取り込んで調査することで、調査スピードが格段に上がりました。
ストイックすぎる調査合宿
CS立体図を得て調査のコツもつかんできたこともあって、GW、夏休みは鬼のように調査をしました。先に書いた通り、KOLC調査は各々で作図をします。テレインの性質上調査できるメンバーも限られてくるので、いつものメンバーで合宿に行って、調査をして、ラントレをして、各々相談しながら作図をして、寝るっていう超ストイックな調査合宿をしてました。「朝7時起きね」って言うとだいたい稲森が渋い顔して「6時半にしよーぜ」とか言い出して早朝から森に行ってました。でも眠くなってみんなテレインで昼寝してるっていう…PVとかで映っていたきれいなオープンが寝心地がよくて僕はいつもそこで昼寝していました。
こんな調査合宿を好む奴なんて、よっぽどオリエンテーリングが好きじゃないと無理だなって思います。でも、僕はこの時間がとても有意義で楽しかったし、いろんな人に伝われこの楽しさ!って思います。
そんなこんなで筏場の地図がだんだん出来上がってきました。
地図の巨匠 ついに動き出す
2017年の終わりに近づき地図の概形も大分見えてきたところで、ついに第7回大会作図責任者、上島浩平が動き出しました。逆に彼は今まで何もしてこなかったのか、というと語弊がありますが、満を持して作図責任者として全体地図のチェックを始めました。
チェックポイント
① コンタを不自然のない滑らかな曲線を描いているか
② コンタの間隔が等間隔になるように調整
③ れき地とコンタを被らせない
④ 最小間隔を守る
特に③のためにれき地を一つ一つ打っていくのはとても骨が折れました(上島が面状のれき地をコンタの部分だけ切り取る技を使っていましたが僕はやり方を知りません)。しかし、この4項目を満たすように地図を調整することで地図全体の判読性が大幅に上がりました。
地図の表記、総描
このテレインの一番難しいところ、
①総描
②コブ、ピーク、補助コンピーク、岩、岩石群、岩石地
です。
① 総描
とは現地で分かりやすい地形を優先的に地図に書いて微妙な地形は省略して書かないってやつです。ぶっちゃけ相当総描しましたが、それでも細かい地図になってしまいました。一年経って見直すと、もうちょい簡略化できたかなって思うところもありますがよく分かりません。勘弁してください。
② 高さは「ピーク>補助コンピーク~コブ」、広さは「ピーク>補助コンピーク>コブ」というイメージで取りました。
岩は本当に巨岩、岩石群は遠くから識別出来るくらい特徴的な岩の塊(点)、岩石地は遠くから識別しにくい特徴的な岩の集まり(面状)、
コブか岩石群か迷ったらコブで取ってました。
一応、僕がテレイン中を歩き回ったんでレースに支障はなかったはずですが…人によって認識がことなるのでどうしようもないです。むしろ競技者側が微妙な特徴物はナビゲーションに使わないようにしてください。
最後の2題は突き詰めたらきりがないので、ある程度で妥協してついに地図完成にたどり着きました!!
調査合宿の裏話、タイヤパンク事件とかコインランドリー事件とか3分に一回スズメバチに遭遇事件とかコースセットの話とか書きたかったんですけど疲れたので秘密ということで、
最後に言いたいのは、
このテレインにはコンタ一本から、れき地一個にまで、調査者の思いが漏れなく詰まっているってことです。適当に描いたものなんて一つもないので。
2/23に筏場国有林で公開練習会を開催するので、ぜひこの地図を堪能しに来てください。次回以降は運営者が就職しちゃうのでいつ開催できるか分かりません。
このチャンスを逃すな!!