オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

富士見全日本大会運営を振り返って

近藤康満です。

2020年11月21日と22日に開催された全日本ミドルオリエンテーリング大会と全日本ロングオリエンテーリング大会で運営責任者を務めました。2日間で延べ1300人以上の方にご参加を頂き、また難度の高いタフなテレインで日本選手権者を決する舞台を提供する事が出来て感謝でいっぱいです。

そんな中、運営を進める上でこれまでの大会運営の考え方ややり方に疑問を感じることがありました。ほとんど愚痴の様になっているかもしれませんが、ご容赦ください。

この大会では長野県富士見町の富士見高原リゾート様を会場として利用しました。同会場で開催された2015年のインカレスプリントとロングの運営と所々対比させながら、今後大会運営や大会参加がどうなっていくと、より良い物になるか私見を述べます。

「大会運営=大変なこと」から「大会運営=楽しいこと」になる助力になれば幸いです。


【運営パートの簡素化を競技パートの拡充を】

よくある大会運営組織として実行委員長の下に競技責任者と運営責任者が置かれます。競技責任者の下にはコースセッターが、運営責任者の下には渉外・広報・資材・宿泊交通・会計等の各責任者が置かれ事前準備にあたるというのが、よくある体制です。

2015年のインカレでも同様の体制が採られました。よくよく考えて運営パートってそんなに細分化して人手を掛ける必要があるのでしょうか?

渉外については稀に人海戦術が必要なこともあるかもしれませんが、広報と言っても殆どはオリエンティア相手、資材もほぼオリエンティア相手、宿泊交通の実務は業者任せ、会計は殆どが大会後に動くのに、なぜそこまで細かく分けるのでしょうか?

1000人規模の殆ど身内でサービスマージン(大会による利益)も出していない様な大会なら、最低限1~2人で回せば十分な様に思えます。準備にあたる人数を増やすことで各業務の進捗管理やフォローの工数が嵩みます。それをやるなら運営責任者なる人物が全部自分でやっても大差ないでしょう。寧ろ総工数は少なくなります。

今回の全日本大会でも運営パートの事前準備は、基本的に私一人で行い、どうしても拾いきれなかった部分だけ他の方にお願いするという形で行いました。少し追いつかなかったシーンはありましたが、従来の様に多くの人をあてなくても十分に回しきれる感覚を得ました。

一方で大会の根幹であるはずの競技パートは、なぜ北斗神拳が如く競技責任者とコースセッターという一子相伝の体制なのでしょうか?

競技パートではコースを組む以外にもやることがたくさんあります。地図・計測・競技資材確保・競技中誘導の設計・渉外との連携・複数日の場合はエリア配分等。一子相伝体制だとコースを組む以外の部分は自ずと競技責任者が負うことになります。しかもこれらは拾い損ねると大会の成否に関わるものばかりです。

競技責任者が全体を俯瞰して競技の品質管理ができる様、実務寄りの部分は専任の担当者を厚く配置すべきだと思います。最近イージーミスによる競技不成立の事例が見受けられますが、この競技パートを俯瞰して確認できる人がいない(実質的な競技責任者の不在)がその一因の様に思えています。


【地元との手組みとその為に普段のクラブ活動を】

オリエンテーリングの大会を行うにあたって肝要なのが、その大会によって恩恵を受ける人が誰かを見つけてその人を巻き込むことだと考えています。

分かりやすい例だと、会場となる施設や周辺の宿・温泉等が挙げられます。1回きりのイベントや不定期な開催ではなく、少なくとも年1回はオリエンテーリングイベントを行い定期的な収入集客を行うことで、地元からの信頼は厚くなると捉えています。

今回本大会の開催に向けてご尽力を頂いた会場でもある富士見高原リゾートのご担当者様は、2015年インカレ以来のお付き合いです。2015年のインカレ実施以降は1~2月に1回はコンタクトを取り近況のご報告等を差し上げていました。また、毎年の合宿などで富士見付近のテレインで実施の際には施設利用料をお支払いするという仕組みを設けました。これにより「オリエンテーリングの人と付き合うと多少なりともメリットがある」という考えをもって頂けているのではと思っています。

肝要なのは「①定期的」な「②メリット」があるということです。これは昨年のAdvent Calendarでも書かせて頂きましたので、詳細はそちらをどうぞ。

田舎から渇望されるスポーツになろう - オリエンティア Advent Calendar

①については、過去自分が事業者として施設運営をしていた経験からも言えることで、都会集中のオリエンテーリング業界が陥りがちなことです。「A.不定期だけどたまに沢山来てくれる」と「B.少しだけど定期的に来てくれる」では有り難みが全く違います。AのあとにBに繋げられるかが、全うな「地域クラブ」と「倶楽部」の違いだと思っています。

②については、何も金銭的なメリットでなくても、山のゴミを拾ってくれるであるとか、草を刈ってくれるなどの便益でも十分だと思います。

今回大会で会場との折衝や渉外があっさり終わったのは、2015年のインカレで富士見高原リゾート様との関係が始まった後に、①②を満たした関係性を維持できたからこそ、宿や施設だけでなく公有林の渉外協力までしてくださったのだと思います。

そりゃ何年かに1回 都会から押し寄せては山を走り回りたいという人より、毎年/毎月 顔を見せてくれて何か手伝ってくれる人の方が、渉外活動は楽にになります。


【変化を受け入れ、より楽をしよう】

数年前と比較するとオリエンテーリング大会運営時エントリーとりまとめの工数は大きく減りました。明らかにJOYのおかげです。西村さんには感謝しかありません。

技術の進歩というと大げさですが、時代が進むとともに便利な物やサービスが次々と増えていきます。そういう物は躊躇なく取り入れるべきです。「xxxだと使えない人がいるから」と旧来のやり方も継続していたら結局両方ともやる事になるだけで、寧ろ大変になります。それは、進歩や引いては教育を愚弄していると思っています。

今回の全日本大会では、申込みをほぼJOYに一本化、会場事前申込みの撤廃、公式掲示板や当日参加フォームをQRコードを用いてオンラインで運用する等しました。試験的に行なった部分もあるので賛否両論あると思いますが、運営上のメリットがある明らかなものは、今後も改善運用していって欲しいです。


【サービスは有料。簡素化を受け入れて参加する】

オリエンテーリング大会の多くは、大儲けとはいかないはずです。他のスポーツと比較して事前工数が多く当日の参加費だけでペイするのは難しいものが多いでしょう。つまり、大会運営者もボランティアか、良くても割に合わない薄給で動いています。

その一方で、オリエンテーリング大会会場を一流ホテルかの様に、運営者をコンシェルジュかの様に勘違いしている残念な人がいます。社会常識として述べておきますが、分からないことがあったら先ず、自分で考えて解決を試みましょう。幼い子供ならまだしも、いい大人が会場の目の前で「会場どこですか?」と聞いたり、プログラムに明記してあるにも関わらず「配布物はどこで受け取れるのか」と聞くのはやめましょう。大人が聞いて優しく案内してくれるのは追加でお金を払った場合のみです。

今回はそこは割り切って割愛できるものは割愛したつもりです。一部混乱を招いてしまった部分もあるかもしれませんが、これを機に、割愛しても大会の本質に関係ない物と、そうでない物の色分けが進めば幸いです。白書の様に詳細なプログラムや、空港の様な詳細な案内板・上げ膳据え膳レベルの配布物準備は本当に必要ですか? 良いコースをフェアに走れることが核心なのに、そんな枝葉末節に気をとられることは理解に苦しみます。

また、内容をよく確認しないでエントリーし、締め切り後の変更依頼や、そもそも締切を守らない極めて非常識な行動が多々見られました。前述のような状況は運営者にはただの重荷でしかありませんし、ヒューマンエラーの原因にもなります。今回はその様なイレギュラーが30件近くにものぼりました。およそ20人に1人です。今後はその様なイレギュラーを切り捨てても文句を言われる筋合いはないと思います。なぜ確認不足のために何時間もこちらのフリーな時間を削られなければいけないのでしょうか。

前項目とも関連しますが、分からない事を自力で解決できなかったり、変化に適応できないならお金を払って解決しましょう。運営者もイレギュラーに対しては躊躇なく切り捨てたり追加料金を請求して良いと思います。


【運営と参加はギブアンドテイク】

それでもオリエンテーリングの大会が成立しているのは、運営と参加は持ちつ持たれつ、キブアンドテイクの精神が根本にあるからだと思います。

競技者として参加もするし、運営者としても運営をする。双方の視点があるからこそ、相手を慮ることが出来るのだと思います。

どんな小さなイベントでも良いので、年に一回は運営に加わりましょう。また、運営ばっかりしている特異体質の方もたまには競技者として参加してみましょう。

参加だけしている運営だけしているでは、オリエンティアとして片手落ちです。


【終わりに】

他にも細かいことはいくつもありますが、上記が大部分かと思いますので割愛します。

オリエンテーリング大会において何が核心なのかを念頭において、参加者と運営者が双方を慮ることが出来れば運営は必ず楽で楽しいものになると思っています。