オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

怪我から復帰してインカレロングで2位をとった話

東京大学2018年入学の朝間玲羽です。オリエンティアAdvent calendarの19日目を担当させていただくことになりました。よろしくお願いします。

今年のAdvent calendarには表裏問わず多数ケガ関連の内容の記事が並んでいたので自分が書く必要もないかなとは思ったのですが、逆に怪我について書く人が多ければみんなも少しは注意をしてくれるようになるかなと思いやっぱり怪我関連の記事にしました。具体的な指南書のようなものは書けないので、とにかく自分の体験談を中心に書いています。なるべく情報量だけは多めを心がけたのでつらつら続く日記の中からみなさんに何かしら得るものが有れば幸いです。要所要所太字で強調するところがあるのでそこから何かしらのメッセージを読み取ってくれればと思います。

 

◆はじめに

僕は主に体が硬いことを原因として人生を通じてたくさん怪我をしてきました。サッカーをやってた小学生時代、中高の陸上部時代も怪我は多かったのですが、大学でオリエンテーリングを始めてからがピカイチに怪我が増えました。2年のJWOCセレはまともに走れない膝を抱えながら走ったし、秋インカレの頃にはシンスプリントを悪化させてやっとジョグがちょびっとできるようになったのがスプリントの前日だったり、今回の話につながる膝の怪我を1月のハーフマラソンでしてしまって半年走れなくなったりと大変でした。今も春インカレに向けてトレーニング量を増やすなかでくすぶり続けるケガの気配との戦いを続けています。

 

 

◆ケガで消えた2020年前半

2020年の1月、東大OLKの有志でハーフマラソンの新春大会に出ることになりました。はじめてのハーフだったので非常に楽しんでレースに臨みました。ちなみにこの大会に参加する直前の年末には東北大合宿に参加してマススタートメニューなどを可能な限りこなしてトレーニングに励んでいて、自分では自覚はありませんでしたが疲労は筋肉に蓄積されていました。ハーフマラソンのレースで13キロくらい走った時に膝の上に違和感を覚えました。けれども痛みはなかったのでそのまま走ってゴールしてしまいました。記録は80分くらいで自分的にはまぁまぁ。なんか膝周り動かないなぁと思いつつもあまりダウンをやらずに帰りました

 

その次の日、千葉大大会に行きました。朝移動している最中に歩くのもちょっと厳しいかもしれないくらいの痛みを感じていましたがまぁ会場についてから判断すればいいでしょと考えて会場到着。スタートまでが結構遠く、いつも通りの感覚でジョグで向かおう〜と思ったら痛みで全く走れず、でもなぜか頑張ってスタートまで行ってしまいました。スタートについたらまぁレースやるかという気持ちになりペースは抑えましたが完走してしまいました。痛みの出ないギリギリの範囲でやろうと思ったのですがどんな走りをしても痛かった。さすがに午後のリレーは休もうと思ったら、なんとチームメイトの1人が欠席することになり急遽その穴を埋めるために参加してくれる人が現れてしまいました。棄権すると言い出しにくくなり、「ちょっと不調かもしれないのでジョグでやります」と宣言はしたもののリレーには参加することにしてしまいました。チームはトップ付近で帰ってきてアンカーの自分の番になりました。宣言通り非常に抑えたペースで走って痛みもほどほどに抑えられていたのですが、なぜかレース終盤にやっとトップ集団に追いつかれ、これは勝てるかもしれないと思ってしまい普通のペースで走って優勝してしまいました。その後は案の定ですが、もう歩くこともままならないくらいの膝の痛みになっていました。

 

ここで痛めたのは膝の皿の上の部分で、レントゲンとかに映るタイプのものではありませんでした。これと全く同じ怪我を4月にしていて、原因不明でしたが1ヶ月くらいで勝手に治ったので今回も休んでれば時間が治してくれるだろうと楽観的に考えていました。けれども3月になるまで全く治る気配はなく(東大のリレーセレに痛みを抱えながら出たのとかも良くなかった)、春インカレに向けて1月から一度もオリエンテーリングはまともにできませんでした。当然整形外科には何度も足を運びました。ですが行くたびにとりあえずレントゲン撮るよ〜骨には異常ないね〜湿布貼っときゃ治るよ〜と言われるだけで、結局かけらも走れる気配は見えず、もう走ることはできないのかなと思うほどでした。そんな感じで気持ちは全く乗らず春インカレの対策もほとんどしていなかったので、コロナで春インカレが流れてくれてよかったと心の底から思いました。

 

もう病院に対しても信頼は持てず、けれどもこのままではいたくないという思いもあり、ダメ元でオリエンテーリング界では非常に有名な鍼師さんのところに行ってみることにしました。ここでダメならもう諦めようかなくらいの気持ちで伺ったのですが、いい意味で予想を裏切りそこでは自分の世界がひっくり返るような経験をさせていただけました。体に関するさまざまなことを教えていただき、自分の体に対する気づきも得ることができました。まずびっくりだったのが、休んでいれば怪我は治るという考えは誤り(かもしれない)ということです。特に自分のよくする怪我の場合は筋肉が硬化してその固まった筋肉が靭帯などを引っ張ってしまうことによって炎症が発生しているパターンが多いらしく、休ませるのに加えてストレッチやマッサージを並行して実施して筋肉を柔らかくしていかない限り根本的に治ることはないとのことでした。その教えを受けてそれからは毎日欠かさずにストレッチをするようになりました。

 

鍼治療とストレッチの効果が出たのか3月の下旬ごろにはやっと走れるようになりました!クララが立った!くらいの感動でした。しかしこれで終わってはくれません。走れるのが嬉しすぎていきなり走りすぎました。自粛期間ということもあり暇を持て余し月間200kmを超える距離を走ったら左内くるぶし上あたりに痛みが生じました。その痛みは数日のうちに大きくなり一瞬でジョグをすることが不可能なレベルまで引き戻されました。この時もまた休んどけば治ると信じていましたが前回と同様かけらも治らず数ヵ月がたってしまいました。自粛期間ということもあってなかなか声をかけられずにいたのですが、背に腹は変えられないということでもう一度あの鍼師さんを頼ることにしました。診てもらうと一瞬でふくらはぎの筋肉の硬化や骨との癒着が原因であると特定してくださりました。その部位の治療を行ってもらったほかストレッチに関してもさまざまなアドバイスをいただきました。この時点で7月半ば。

 

 

◆インカレロングに向けての取り組み(主に体づくり)

治療をしていただいてからほんのわずかですがジョグができるようになりました。実に半年ぶりくらいにまともな復帰を果たしました。東大のオフィシャルさんとも相談して4月と同じ轍を踏まないようにゆっくりランニングを再開することにしました。半年間で体力レベルも相当落ちてしまっていたので、始めは10分間走れることを目指そうというところからスタートしてキロ9分ペースで1キロを走るだけができたら自分にご褒美をあげたくなるというレベルでした笑。それから7月といえば塩谷4daysにも出ました。オリエンテーリングが久しぶりすぎてあらゆる人にボロ負けかと思ったのですがみんなコロナにかこつけて何もやってなかったようでそこまで実力が離されていないとわかり心の中の焦りの気持ちが消えました。7月は月間30kmくらい走りました。

 

8月序盤はランニングを再開したことが原因なのかやはり体に痛みが出ました。次は腸脛靭帯炎でした。そのため8月前半は痛みの出にくい階段ダッシュを中心に組み立て、ほとんど距離を走らないようにしました。また、信頼できる人には積極的に教えを乞うた方がいいという考えに至ったのであの鍼師さんにも診ていただきました。そこで新たに、腸脛靭帯炎の原因は大臀筋と大腿筋膜張筋にあるということを学びその部位を積極的にストレッチやマッサージするようになりました。結果として徐々に走ることが可能な体になっていきました。負荷を少しずつかけられるようになった8月後半は週1回のポイント練習+残りの期間はレストまたは距離を極限まで抑えたジョグをしました。ポイント練習といってもレベルは当然とても低く、記念すべき第一回目はアップのつもりでやったキロ4ペース走4キロでなんと心拍数190オーバーを叩き出し、全身筋肉痛になりました。しかし人間の体はすごいもので、2週間後くらいにはペース走を心拍数を抑えてこなした後に200mのインターバルを33秒くらいのペースでこなせるくらいにまでに体力レベルが戻ってきました。体力面でのトレーニングはこんな感じで、技術面は東大大会の調査をひたすらすることで磨いていました笑。8月の走行距離は50kmくらいでした。

 

9月になりました。このころにオフィシャルさんたちと話して秋インカレでは小牧選手に勝ちにいかないということを決めました。理由としては、彼だけがコロナの状況下でも努力して成長し続けていたこと、そして追いつくと決めてトレーニングをしてしまうと自分が怪我をすることがほぼ確実なことなどがありました。しかし他の選手はコロナの状況で多かれ少なかれ手を抜いているような印象を受けていたので怪我によって失った半年はディスアドバンテージにはならないと考え2位を狙うことにしました。それと同時に秋インカレは春インカレで勝負をするための通過点と位置付けて春に向けての計画を練りました。そんな感じで9月は怪我をしないことを第一優先に、距離を積まずに週1回のポイント練習とオリエンテーリングを軸に組み立てて体力ベースの向上と基礎づくりを図りました。ポイント練習としては400mインターバル72秒前後とかをやっていました。9月は月間100km弱です。

 

インカレのある10月になりました。自分に無理を強制しない方針を取ったためか体に大きな障害も生まれずにこれました。インカレロングを通過点と位置付けるためにあえて大会に向けての数週間単位での調整は行わずラスト数日の調整にとどめました。しかし、調整で行ったコスミンテストで1500mで4分20秒台の体力水準があるという結果が出るほどに体のキレはなぜが良かったです。また、インカレでは体の面で不安を大きく抱えるぶん事前の対策では参加者の誰よりも行ったと自信が持てるようにしたいと考え全力で行いました。自分でも気持ち悪いと思いますがテレインに関する情報はほとんど全て入手していて、テクニカルミーティング資料で話題を呼んだケルンの位置もドンピシャで当ててしまいました笑。そんな感じで本番を迎えて2位を取りました。本番どんな感じで過ごしたとかレースがどんなだったとか気になる人がいるかもしれませんが、なぜか本番にはめっぽう強くてメンタル的な対策もしていないので参考になることは特にないと思います。


◆総括

オリエンテーリングをしている人って怪我が多いですよね。僕は中高時代陸上部でしたが陸上ではこんなに多くの割合の人が、しかも長期間にわた って怪我を引きずっている状況というのはほぼ見たことがないです(もちろん怪我運が無い友人もいましたが)。しかもいわゆる骨折みたいなわかりやすい怪我をする人は少ないですよね。膝が痛いとかすねが痛いとかみんな言いますけど、いざレントゲンを撮ってみると医者からは骨には何も異常は無いよと言われて湿布だけを渡される、そんな怪我をする人がとても多い印象です。その原因は何なのでしょう?おそらくですがそれはオリエンテーリングという競技の負荷の異常な高さ・そして競技者のストレッチなどのケア不足が組み合わさって生じる「筋肉の硬化」だと考えています。 この考え方はある鍼師さんに治療をしていただいた際に説明を受けて自分で勝手に納得したものですが、オリエンテーリング中にする多くの怪我に通用するものだと思いました。筋肉を固めないためにはアップ・ダウン・家に帰ってからのストレッチやマッサージなどのケアがとても簡単で有効です!もっとオリエンテーリング界に自分の体を労わる文化を根付かせましょう!

 

それから、ケガについては誰よりも豊富な経験を持っているので何か不安なことがある人は気軽に相談してみてください。