オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

ISOM!地図は面白い!

はじめに

こんにちは〜、Karin Nemotoと申します。主催者から声がかかり執筆することになりました。特に自己紹介することはありませんが、強いて言えばサンスーシという地域クラブに所属しています。あともう少し強いて言うならばば相対的にオリエンテーリングオタク【どういうタイプの?】だと思います。

さて、今日のテーマはISOMで行こうと思います。正直裏向けのテーマかな〜と思わないでもないですが、どうも主催者にはオタクっぽい記事が期待されていないわけではないようなのでこれでいきたいと思います。

ISOMってなんすか

さて、みなさんはISOMについて知っていますか?International Specification for Orienteering Mapsのことです。なんのことかさっぱりですね。昔所属していたクラブの会長は「地図がないとオリエンテーリングができない」と言っていました。その通りです。さて、その地図に書かれている記号ってどういう基準で使われているのでしょうか?ちゃんと全世界共通じゃないと困っちゃいます。そこでこのISOMという文章にO-mapで使われている記号の定義が記されているというわけです。

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ISOMに記されている記号の例。私が嫌いな記号の一つであるこいつを選びました。ちなみに私の1個下の学年の人たちは記号の前についている404などの番号を言えば特徴物名が分かるらしい。

(こわい、ISOMを毎日音読している成果ですね。)

と、偉そうに説明しましたがオリエンティアの半数くらいはこの書物を眺めたことがあるのではないでしょうか?でも何度もじっくり読み込んだことのある人は少ないと思います。そこで、この記事ではISOMってすごいんだぞ!O-mapってよくできているんだぞ!っていうことをアピールしていきたいと思います。と、ここでも偉そうに言いましたが独学ではあるので嘘をついてることがあるかもしれません。ご了承を。あと特にオチとかはないので興味がなければ今日ははずれの会だと思ってそっとブラウザーを閉じてください。

ISOMのここがすごい!

記号の色についてちゃんと意識したことがある方がどれほどいるか分かりませんが、しっかり系統だって色付けされています。


茶色→コンタなど地形に関わる記号(土の色)
黒色→岩に関わる記号
水色→水に関わる記号
黄色・緑→植生に関わる記号(太陽(というかオープン)・藪の色)
黒色その2→人工物に関わる記号

イメージともバッチリ合いますね!特にオリエンテーリングを始めたばかりの人にこれを教えてあげると記号にも多少とっつきやすくなるのではないでしょうか?

  • 記号の表現方法

危なかったり通れなかったりする特徴物は目立って欲しいので太く、そして濃い色でしっかり強調しています。以下に201通行不能ながけ、301渡れない水域、410藪(通行困難)←D藪と呼ばれる?の記号を貼っておきます。輪郭をつけてその輪郭を太くするなんてやり方もありますね。

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(これから記号の写真を掲載したりしますが、基本的にISOMのスクリーンショットなので赤い線が入ったりしています。)

そして、相対的に強調しなくていい記号は細くしたり、ダッシュ記号にしたりと相対的に目立たないようになっています。道の例が分かりやすいですかね。(スクリーンショットなので絶妙に比率がおかしい可能性はある。以下同様。)

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一番上からランク1,2,…,6(←道ってみなさんどういう呼び方をするのでしょう?)。
たしかに徐々に細くなってダッシュの間隔が広くなってます。

いろいろ工夫があるわけですね〜なるほど〜。

ところで

このように、記号を考えた人はあれこれ色々なことを考えながら記号を決めていったんでしょうね。賢い。とりあえずISOMの日本語訳へのリンクを貼っておくので気になった方は色々読んでみてください。

>>ISOM2017

さて気になってISOMを見にいった人は片手で足りるくらいだと予想していますが、ISOMを見ると記号の説明がなかなか始まりません。最初の記号である101等高線(主曲線)はなんと13ページです。なーにをぐだぐだ12ページも書いてるんでしょうね...

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13ページから始まる記号の定義

 

いやいやいやこの無駄と思える最初の12ページにこそISOMのエッセンスが詰まっていると言っても過言ではないのです!

個人的に味わい深いのは2.6 総描と判読性(P6)、2.7 精度(P7)、2.11 最小寸法(P9)あたりですかね。総描は19日の裏アドベントカレンダーにお任せするとして、精度については「 絶対高度の精度は、オリエンテーリング地図では必ずしも重要ではない。一方、隣接する特徴物間の相対的な高度は可能な限り正確に表すことが重要である。」 という一節が良いですね。オリエンテーリングは結局特徴物の相対的な位置関係を用いてナビゲーションするから厳密に正しい必要はないですよ〜と(調査するのも大変だ)。その代わりお互いの位置関係はしっかり表現してね〜ということですね。考えてみれば当たり前だけど言われないとなかなか気がつかないなと読んでいて思いました。

最小寸法は次の節にします。

最小寸法!

  • 最小寸法

あんまりにも小さい記号だと走って地図を読んでいても何が書いてあるのか判読できませんよね。そこで、藪といった面状特徴物には面積/幅が、および道や植生界といった線状特徴物には最小長さというものが定められています。最小幅については省略しますが、例えば藪の最小面積は以下の通りですね。

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それぞれ現地では15×15 m、10.5×10.5 m、8×8 m

 

薄いB藪から濃いD藪にかけてどんどん最小面積が小さくなっていきます。 そりゃあ薄い色(B藪)の方が判読しにくいですからね、最小面積は大きくしないと見にくいです。逆に濃い色(D藪)は判読しやすいので相対的に小さいサイズでも許容されると。

あとは516柵と517崩れた柵も比べてみるとこんな感じです。

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それぞれ現地では22.5 m、55 m

 

崩れた柵は破線で表される記号なので2ダッシュ存在しないと柵の記号と区別できないですね。というわけでこんなに長くなってしまっています。 いや〜こういうのもよく考えられていますね〜。

さて、ここで思い出したいのが先ほど述べた「危なかったり通れなかったりする特徴物は(中略)濃い色でしっかり強調しています。(中略)そして、相対的に強調しなくていい記号は細くしたり、ダッシュ記号にしたりと相対的に目立たないようになっています。」ということです。これと最小長さ・面積との関係を考えてみると...?

前者の目立って欲しいやつは濃い色で書いてあって現地で小さいものも地図に書かれています。良いですね〜。そして後者の目立たないものは現地で小さいものは地図に書かれていないというわけです。目立たない特徴物はただでさえ目立たないのに小さかったら余計にナビゲーションに使えないですからね。合理的だ(と私は解釈しています)。

  • 最小間隔!

ここで説明した最小寸法の仲間たち(最初長さ・最小面積・最小幅)以外にも最小間隔というものもあります。まあこれについては写真を見てもらうのが早いでしょう。

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右: なんか記号がくっついててよく分からないなー :(
左: 記号がみやすい! :)

こういうことですね。くっついていると見にくい。右側なんてこうやって止まっている画面を見ててもちょっと見づらいのに走っている時には見えるだろうか、いや見えるはずがない。 ちなみにだいたい0.15 mm離せばいいことになっています。これくらいちゃんと離すと見えやすさが格段に違うんですよね〜。この間隔を決めるのにどれほどの議論があったのか気になりますね(対して議論されてなかったりして。うーんこれくらいなら見やすい!みたいな笑)。

あと記号の実寸の話とかしたいと言えばしたいけど長くなってきたしこの辺りで。あと書く時間がない。

おわりに

さて、どれほどの方に読んでいただいているのか分かりませんが少しでも多くの人にISOM(というか地図?)って面白いな〜よく考えられているな〜と思ってもらえれば嬉しいです。 でもこうしてみるとあんまり大したこと書いてないですね。

あ、蛇足(というかテクニカルな話)ですけど今日書いたことはあくまで「原則」です。千差万別あるテレインを1つの基準だけで運用するのは難しいと思われるので物にはよるけど多少の逸脱はOKのはずです。大事なのはテレイン全域で一貫した基準で地図が作成されていることですね。 規則も大事だけどなんのための規則なのかを理解するのはもっと大事ですね!

オタクのつぶやき

これで終わりにしてもいいんですが、最後にこの項目ではISOMのニッチそうなことを書くという誰得なことをしていきます。

  • 穴の記号について

穴の形をした記号はいくつあるでしょうか?答えは112穴、203岩穴・横穴、303小さな池の3つです。これだけでも十分ニッチかもしれませんが、ここでISOMの最終ページを見てみましょう。記号の厳密な定義が記されています。そしてよく見るとこれらの記号は全く同じ形をしているわけではないんですね(下の図の112, 303と203に注目)。

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このページを見ればすぐに分かることですが、もっと言えば緑の×・○と黒の×・○もサイズが違います。

  • 岩穴と横穴

こいつら同じ顔しています。

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岩穴と横穴の双子

 

ISOMには「位置は記号の重心とし、この記号は北に正置する。ただし明瞭な入口のある横穴の場合、記号は横穴の開口部の方向を向けて表記する。」とあります。これ、開口部が真北向いてたらどうするんだろう?とずっと思っています。ちょっとだけ記号を傾けて横穴だよ〜ってアピールするのか?まあナビゲーションに影響があるかと言われると微妙だけど。 というかそもそもなんでこいつら同じ記号なんでしょうね。歴史的な経緯があるのかもしれませんが日本で横穴にあまり馴染みのない生活を送ってきたので私はうまく解釈できていません。

なんか凹んでるものの話ばかりだ。この記号が地図上に占める面積を現地での面積に置き換えるとなんと10.5 m×12 mにもなるんですね。でかい!しかも「5 m×5 mよりも大きな穴は記号104(土がけ)を用いて誇張して表記することを推奨する。」とか書いてあって地図上に占める面積がもっと増えちゃいますね。はい、とくにオチはありません。まあこんな感じで地図記号は現地のものを誇張して紙面上で大きなサイズを占めているんだよ〜ということはちょっとアピールしたかった。

  • 711 通行禁止のルート

ISOMから引用しておきます。 「通行してはいけないルート。競技者は通行禁止ルートを横断することは許されるが、それに沿って通行することは許されない。(訳注:競技者は)通行禁止のルートを利用してはならない。

  • ISOMへの不満(というか最小寸法についての違和感?)

素人考えかもしれませんがISOMへの不満もあります。例えば516柵と518通行不能の柵の最小長さを比べてみましょう。

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現地では22.5 mと30 m

 

なんとなく直感的には、通行不能な特徴物の方が大事だから現地で小さいものも取ってあげた方がいいのかなという気がしてしまいますが実際には通行不能の方が最小長さが長いですね。

あとは湿地も。307渡れない湿地と308湿地を比べると...?

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現地では112.5m2と45 m2

やはり通行不能の方が広い最小面積になっています。 いや、こうなってしまう理由は理解してはいるんです。こういう通れない特徴物は地図上で目立たないといけないからタグを2本にしてみたり枠をつけたり線を太くしています。それゆえにあんまり小さいとつぶれちゃったりして結局なんの記号か分からなくなっちゃうという。 ということで頭では理解できるけどなんとなく直感とは反するよなーとは思っています(地図で書けない危ないところにわざわざ青黄テープ巻くとかよくありますもんね)。

もっといえば504軽車道(ランク3と呼ばれる?)の最小長さは94 mでがその1個下のランクである505徒歩道の最小長さ64 mと比較してべらぼうに長いのも気に入らないですね(505徒歩道の最小長さは日本語版ISOMに誤植がある)。これも504軽車道は太い上に破線の記号なのでしょうがないのですが。

今度こそおーしまい!

編集後記

  • どういう層を読み手とするのかが難しかった。どこまで専門用語を説明すべきか...あと説明が冗長に思われる箇所もあるのかもしれない...
  • 記号の呼び方が年代や地域によって違いそう。
  • パソコンがmacだとこういう記号について語るときには面倒である。
  • 最近真面目にISOMを読む機会が少ないので知識が減ってしまったような気がする。
  • 結局ISOMに関わることをぐだぐら書くだけの会みたいになってしまった。
  • おわりおわり〜