オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

インカレスプリント失格集とその対策案

 

 

 こんにちは、こんばんは。早稲田大学オリエンテーリングクラブ3年の大石洋輔と申します。中学1年生のころからオリエンテーリングをやっているので、もう競技歴は8年程度になります。好きな食べ物はスパイスカレー、嫌いな食べ物はいちごの加工品(特にハイチュウ)。好きなテレインは瑞牆の森、二子(ステマ)、嫌いなテレインはありません。全部好きです。よろしくお願いします。

 

 僕の話はどうでもいいですね。前の方々の記事がとても素晴らしくて恐縮なのですが、この記事では、アドベントカレンダーの場をお借りして、最近よく話題になるスプリント競技の失格、特にインカレスプリントに焦点を当ててまとめてみました。読みにくい箇所等あるかと思いますが、是非気楽に読んでみてください。

 

 なおこの記事の作成にあたり、KOLCの巨匠こと上島さんから沢山のアドバイスをいただきました!ありがとうございました。

 

 ◎初めに

 

 スプリント楽しいですよね。ウイニング15分くらいの短いコースで、体力ギリギリまで追い込みながらの多彩なルートチョイス、ナビゲーション。一瞬の気の緩みから生じるミス。盛り上がる観戦。フォレストと違って靴も汚れないし。大好きです。

 

 そんなスプリントですが、皆さんご存知の通り、日本で普及を始めたのはごく最近のことです。実際にインカレスプリントも今年で5回目ですし、自分が中高生のころはスプリントといえば、いわゆるパークOでほとんど体力ゲーでしたので、スプリントというものが、ここ5年ほどで急速に浸透したのだなあ、とつくづく感じます。

 

 さて本題です。残念なことに、インカレスプリントでは、ほぼ毎年失格者がかなりの数出てしまっています。その理由は上記したようにスプリントの歴史の浅さ故の、競技者の理解の薄さ、運営面でのノウハウがまだ確立されていないこと、などが原因であると思います。それに加えて、インカレ特有の性質(誘導の多さ、応援によって競技者が冷静ではなくなること、競技性の高さの追求によるイレギュラーなコース、などなど)も関係しているのではないでしょうか。私自身、今年のインカレスプリントでは多くの失格者が出てしまっていたことで、かなり寂しい気持ちになりました。

 

 ここからは若干自分語りになってしますのですが、僕は今年のインカレスプリントで2位になることができました。ですが、それは多くの有力選手の失格者が出た中での2位でした。自分の中では、憧れであり大好きだった4年生との最後のインカレスプリントということで、かなり思い入れがあったうえ、4年生が失格していなかったらタイム的には負けていたことを考えると、2位という結果はとてもモヤモヤさせられました。今でも手放しには喜べません。失格が多いのは、運営も選手も観客も誰も幸せじゃないんです。

 

 そういうわけで来年度以降のインカレスプリントでは、過去に生じたタイプの失格が出ないでほしいと思い、このアドベントカレンダーの場をお借りして、過去のインカレスプリントの失格の原因、それに対する自分なりの対策案をまとめてみようと思いました。

 

 ◎失格集

 

 ではいきます。ここからは2015年からの5回のインカレスプリントで多く出てしまった失格について紹介し、それに関する対策案をまとめていきます。初めに申し上げておきますが、一生懸命素晴らしい舞台を作りあげてくださった運営者の方には本当に感謝しています。あくまでもコースをしっかりと順番に回ることは競技者の義務であります。

 

 ただ、繰り返しにはなりますが、失格者が少ない方がみんなにとってハッピーだと思うので、今後の対策になればと思い、この場でまとめさせていただきました。ですから、運営者の当時の判断、行動を非難するつもりは全くございません。また、著作権など詳しいことが分からないので、何か問題ありましたら報告ください。

 

 ①2015年 富士見高原リゾート

 

 記念すべき第1回インカレスプリントです。テレインの特性を存分に発揮している上に、演出も凝っている最高のコースだと思います。めっちゃ走りたい。最高。神。流石トータス。話がそれました。

 

 

  • 3連続ショートレックによるコントロール飛ばし

 

 個人的に、この年で特筆すべき失格だと思います。ショートレックが同じ向きで連続していることでこの画像における10番を飛ばしてしまう選手が続出しました。机上で地図を見ると、飛ばすわけなんてないと思ってしまいますが、スプリント中、高速で走る選手にとっては、9→11に見えてしまったようです。

 

 対策としては10.11の数字を白抜きにすることで視認性を上げること等があると思います。また、これはコースセットとの兼ね合いがあるので何とも言えませんが、同じレック線の向きで連続させない、などがあると思います。

 

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(実際の地図

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(白抜きされた地図)

 

 

 

 ②2016年 天平の丘公園

 

 第2回です。この年ではあまり共通した失格がなかったのと、この回は自分が入学する前で詳しくないので飛ばします。ごめんなさい。

 

 

 ③2017年 時

 

 第3回です。岐阜県の集落を使って行われた市街地スプリントです。初めて(?)の市街地スプリントの試みだったり、私自身初めてのインカレエリートの舞台だったりと、とても印象に残っています。

 

 

  • 立ち入り禁止テープを踏んで失格

 

 まずはこれがあると思います。下の画像の通り、4番コントロールは階段の上についています。また、立ち入り禁止の境界には青黄テープが地面に引かれていました。足元より下にテープが引かれているので、階段の上からの視認性は低かったと推測されます。そのため、ある競技者は脱出の際、階段を駆け下り、勢い余って青テープを踏んでしまい失格になりました。

 

 対策としてはテープを地面に引くのではなくなるべくわかりやすい高さにする(ただ、渉外上の都合などから難しいことが多い)、テクニカルミーティングにて現地状況を伝える、階段から高速で下る競技者が勢い余ってしまう可能性を考慮したコースセットなどが挙げられると思います。

 

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(インカレ2017年度報告書より)

 

 若干話は逸れてしまいますが、最近失格させたい風潮への批判意見が多く出ていると思います。私もその意見に関しては同意です。運営者の方にもちろん悪意があるわけではないとは思うのですが、ルールに厳格すぎるが故の失格者の続出はスマートではないと思います。ルールというものは何か守りたいものがあるが故のものであり、ルールそのものを崇拝しすぎるのはよくないと思います。(この時の運営者の方の判断を批判しているわけではないので悪しからず。)

 

 

  • 誘導テープが辿れなくて失格

 

 続きましてインカレで頻繁に話題になる誘導テープについてです。下の画像の誘導区間では、短冊テープとレーン状のテープが混在していました。そのため、レーンから短冊への変化の際にテープが分かりにくくなっていました。また、レイアウトとして、進行方向左手にテープ、右手に観客という形がとられていました。結果として、右手の観客に気を取られ、テープを見落として途中で誘導を離れてしまう競技者が出てしまったようです。

 

 運営者は誘導終わり地点に「誘導終わり」の看板を設置してくれていたようですが、テクニカルミーティングでその存在を告知していなかったことが反省点として報告書にありました。

 

 以上より、誘導終わり地点には、看板の設置、もしくはコントロールの設置、またそのことのテクミでの提示をすることが対策としてあげられると思いました。

 

 また誘導テープそのものとしては、最初から最後までレーンにするのが理想だと思います。もちろんこれは渉外上の都合などで困難な場合があるとは思いますが。

 

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(現地でのテープ)

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(実際の地図)



 

 

  • 地図の全体的な色について

 

 話はまたもや失格の話から逸れますが、地図の視認性についてです。時の地図では、JSSOM2007の「競技エリア内に自動車が運行する道・区域があり、競技中に自動車の運行を停止・制限できない場合、競技者の安全確保を図るため、自動車の運行する道・区域は茶色の表記を濃くして示してもよい。」という箇所の採用から、車の通る可能性のある箇所は濃い茶色にて描かれています。個人的感想なのですが、これって耕作地の色と被って見にくくないですか?全体的に白っぽい色で道を描いた方が、全体的な視認性は向上すると思います。(あんまり地図図式については詳しくないので、見当違いでしたらごめんなさい…)

 

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(時)

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(海外のスプリントマップ)
 

 また、今年のCC7の前日大会として開催された時スプリントでは、道の赤味が軽減された、判読性の高い地図になっていましたので、ここで合わせて紹介します。

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(上の地図と同じ範囲、だいぶ見やすくなってるはず。)

 

 ④2018年 アルプスの丘

 

 第四回です。僕はトランポリンのしすぎで背中を痛めてしまっていたため欠場しました。せっかくセレ通ったのに本選を走れないと本当に悲しい気持ちになるので、皆様トランポリンのし過ぎは気をつけましょう(そういうことではない)。狭くて制約が多いテレインながら、しっかりとスプリントらしい良いコースなのに加えて、観客がテレイン全域にいて、観戦的にもとても楽しいスプリントでした。

 

 

  • 植え込みを切って失格

 

 三件の調査依頼が出たこの植え込みに関する問題についてです。問題となったのは、以下の画像の赤丸で示した箇所になります。コンタが植え込みの上に重なってしまっていて、一見するとこの部分の植え込みが切れている様に見えてしまいます。実際のところは、主曲線の太さは0.21mmであり藪の隙間の最小寸法の幅は0.40mmなのですが、高速で走りながらナビゲーションを行っている選手が惑わされてしまったのも、少しわかるような気がします。また、運が悪いことに、現地の植え込みも人が通れるくらいにはあいてしまっていたとのことです。

 

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(赤丸の部分が問題の箇所。コンタによって植え込みが切れている様に見える)

 

 若干、不運なこの件ですが、地図の印刷方法として重ね印刷がとられていました。これだと重なり合った部分の下のある色の情報が完全に消えてしまいます。ですので、対策としてJSSOM2007が推奨している特色印刷を行うべきと考えられます。

 

 また、当日では運営者の方が、テレイン内に存在する、地図上では通れないが現地では通れてしまう植え込みに対して青黄テープを巻いてくれていたようです。しかしこの箇所には巻かれていなかったようです。とはいっても青黄テープを全ての壊れた植え込みに巻く作業はとても手間のかかることなのでこれは仕方がありません。やはり特色印刷を行うのが一番の対策かと思います。

 

 

 ⑤2019年 中津川公園

 

 記憶にも新しい第5回です。スタジアムを使った非常に狭い範囲の中で、人工柵やスタンドを使った珍しいタイプのコースが組まれました。僕も実際に走ったのですが、常に応援を受けながら走れるので、地獄のような登りレックも頑張って走れました。インカレスプリントならではの非常に楽しい(そしてマジできつい)レースでした。今年のことでよく覚えているので少し細かく書いていきます。

 

 

  • 誘導の始まりが分かりにくい

 

 まずはこれが挙げられます。多くの有力選手が誘導を辿れずに失格となってしまいました。

 

 最初に、地図はこんな感じです。5番から誘導が開始されています。

 

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(GIFUICはマジで気が付かなかった。笑)

 

 次に状況です。5番コントロールが誘導の起点となっていますが、5番のついている崖は青黄テープで人工的に作られたもので、このテープに赤白ストリーマーが巻いてありました。なお5番コントロールの傍には「誘導ここから」の看板が置いてあり、誘導が存在することはテクミでも告知されていました。実際には以下のような感じ。

 

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茨城大学オリエンテーリングクラブ動画班のYouTubeより)

 

 一見すると、飛ばしようがなさそうな誘導ですが、問題点(?)もあります。

 

 ①5→6のレック線は誘導区間がありながら、ほぼ直線的

…一見すると普通のレックに見える。

②青黄テープに赤白ストリーマーが巻いてある誘導の不自然さ

…本来別々の用途で使われるべき、青黄テープと赤白テープが混在して用いられていることはやや問題かと思います。選手は青黄テープを見たら本能的に避けてしまうし、青黄テープに赤白ストリーマーが巻いてある事例は今までにないわけですし。

 

 ここでの失格者のうちのほとんどがシード選手であることをふまえて考えてみると、おそらく、速い選手達は4→5という簡単なレックの間に、複雑なスタジアム内のレックを先読みするべく地図に集中。そのため青黄テープに付いている赤白ストリーマーの短冊に気が付くことなく、看板も見逃してしまったのではないか、と考察します。実際、私自身も、スタート前にディスクリプションを見て、5→6で誘導あるんだと頭の片隅に留めていたおかげで、5番をパンチしてから誘導に気が付くことができました。上の画像からは想像できない何かが働いている誘導だったと思います。

 

 誘導の開始を分かりやすくする対策としては、赤白ストリーマーを青黄テープに付けないこと、また、誘導の見本をテクニカルミーティングで告知すること。誘導のあるレックでは、レック線をなるべく直線にしないこと。などでしょうか。

 

 また、東大OLKの椎名君がTwitterにあげていた対策案も紹介します。左が実際のもので、右が改善案です。

 

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 これなら自然と誘導を辿れそうです。

 

 また選手としても、ディスクリプションをスタート前に見て、あらかじめどこから誘導が始まるかを認識しておくことなどが大事かと思います。

 

 

  • 2MAPの切り替え地点での隣接コントロールによるDISQ

 

 非常に多くの失格者が出たものです。このレースでは2MAPが採用され、両面に地図が印刷されていました。そして13番にてマップチェンジが行われます。ここで失格になってしまった選手の話を聞いたところ、12→13が簡単に見えたため、12と13の間に先に2MAP目に裏返して先読みをしていたら、手前に出てくる21番をパンチしてしまった、とのことでした。

 

 運営者側の対策としては、2MAP目に切り替わるコントロールの近くには別のコントロールを置かない、などが挙げられると思います。

 

 しかし、これは正直競技者の責任が強いところでしょう。2MAP制のスプリントで切り替わるところでは、最大の注意を払うべきと感じました。そもそも21と2MAP目のスタート場所違うし。

 

 

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(1MAP目)

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(2MAP目)
 

 ◎まとめ

 

 大体こんなところでしょうか。もしも間違っているところなどありましたら、コメントなどで言ってください。もちろんTwitterとかでも大丈夫です。

 

 実際に調べてみると、誘導の失格がとても多くことを改めて実感しました。誘導をたどることはもちろん競技者の義務であり、先読みをしていたら見にくくて飛ばしてしまった、とかで許される話ではないと思っています。しかし、この記事を通じて来年度以降の誘導がより分かりやすくなって、変なDISQも減って、ペナの少ないみんながハッピーなインカレスプリントになれば幸いです。

 

 また、最後にはなりますが、これまでインカレスプリントという、運営が非常に大変なものを、継続的に開催してくださった運営者の方に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

 

おしまい

ミスの分析についてーアナリシスを深堀りする

 こんにちは。主催者の方からお声がけいただき、Advent Calendar 6日目を担当することになりました、筑波大学4年の増澤すずと申します。

 

 オリエンテーリングに関することで何を書けるか考えた結果、1年生の頃からずっと書いているアナリシスをテーマにして、それを深掘りしたミスの分析について書こうと思います。

 興味のある方は読んでいただけると嬉しいです。

 

 また、昨年のこの記事はアナリシスを書く上でとても参考になるのでぜひ読んでみてください。

アナリシスのすすめ - オリエンティア Advent Calendar

 

 

はじめてのアナリシス(仮)

 

 先輩に良かったところと悪かったところを箇条書きで書いてみよう!と言われて書き始めたのが始まりです。

 最初の頃は自分の走ったルートはもちろん、プランさえも記憶にありませんでした。つまりプランなんてほとんどせずにただ走り回っていました。頑張ってルートを思い出しながら書くのが大変でした…。たまに上級生に添削してもらいながら徐々に、冬くらいになってやっと感想文からアナリシス(仮)くらいのレベルまでは書けるようになってきました。

 現在の形式で書くようになったのは、6月の東大大会@大泉寺渓谷からです。初めての大会で優勝できて嬉しかった思い出です。やっぱり表彰されるとやる気が出ますし、極度の負けず嫌いなので勝てると楽しいです。

 

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2016年4月29日 本新歓@獅子頭 初めて森にひとりで放たれました。

 

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初めてのアナリシス ただの感想です。良いところが走ったところしかない

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2016年12月3日ミドルセレ対策練@日光和泉 まだ感想文です...

 

 

2年生 

 ほぼ全レース・全レッグを書いていました。全部ミスタイムがついているし、いくつかレッグを厳選して反省を書くなんてできない、、、上手く行けたと思っているレッグでもミスタイムが10秒でもついていると、なんで、どうして、次はどうすれば、、、という風にひたすら考えていました。また、書き終えたアナリシスを数日後に見返して、自分が自分のコーチになったようなイメージで、自分のアナリシスを添削したりしていました。結構楽しいです。

 練習会でも大会でも1レース1レースが貴重で、全部が楽しくて負けるのが悔しくて、教えてもらったことを忘れないうちに、これを別の所にも発揮できればいいのに…というくらいの集中力でアナリシスを書き上げていました。

 

 

3年生

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2018年6月17日全日本ロングW21E@椛の湖 黒(自分)→オレンジ&暗い青(コーチ)→青&赤(自分)→オレンジっぽい赤(コーチ)

 アナリシスがやっと書けるようになってきて、3年目がいちばん伸びた気がします。言語化→分析の流れができて、自分を客観視できるようになってきました。自分の弱み(地形が読めない等々)、強み(比較的体力がある)を理解し、レースで自分を多少コントロールしてプランニングができるようになってきた?からちょっと結果を出せたのかもしれません。

 3年生の後半からは筑波大大会の準備や授業、その他諸々でやっぱり忙しくなってきて、全部のレースを書くのは厳しくなってきました。なので、最低月に1本は書くとして、ターゲットレースにしぼってアナリシスを書いていました。

 自分以外の誰かに添削してもらうと、何気なく書いた一言一句にも突っ込んできてくれるので、より深く分析ができて、アナリシスを書くことでどんどん自分の頭の中が整理されていくのがとても楽しかったです。

 

 

4年生(現在)

 

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2019年9月7日名椙大会WE@作手高原・亀山城址 (赤→コーチ 水色→自分)


 コーチとやりとりする都合上、ノートからWordに変えました。

 ノートだとコメントを書くスペースが限られてしまって、ぐちゃぐちゃ(良い意味で)になってしまっていたのですが、wordに変えたことで見返すときにとても見やすくなりました。毎回3往復くらいやりとりするので、残りのスペースを気にせず、疑問に思ったことをガンガン書けるのがとても良いです。

 自分で解決策を導けるように誘導してくださるので、考える力がより身についてきたように感じています。

 

 

 

ミスの分析

 

 こんなにたくさんアナリシスを書いていて、しっかり振り返らないのはもったいないですよね。一度書いたら覚えられて課題も克服できるなら良いのですが、私はすぐ忘れてしまうので、昨年の春インカレ前にコーチの方とやった方法を少し紹介します。

 

 期間を決めて(4~11月とか)自分が今まで書いたアナリシスを振り返り、オリエンテーリングにおけるミスを①身体的②技術的③精神的ミスの3つに分けて書き出します。

 

私の場合は、

①下りへの恐怖心

②たくさん(のちほど)

③人につられる、ゴールが見えて気が抜けるor焦る

 

 次に、これらのミスに対してどうしてそのミスをしてしまうのか、そのミスを減らす(なくす)にはどうアプローチしていけばいいのか、課題解決策の検討をします。

 ①接地の仕方を変える。練習会でわざと急斜面を選んで下り練習する。そこでちゃんと走れれば恐怖心が消えるのではないか。=成功体験から自信をつけていく

③人につられる→自信がないから。→どうして自信が持てないのか→曖昧なプランで走り出しているから(→後述1.に繋がります)

 ゴールが見えて気が抜けるor焦る→ビジュアル前後、隠れて読む(→駒ヶ根ICLでやりました)実践できると自信になるし次に同じような場面があったときに余裕ができます。

 

私は②の技術的ミスが15~20個くらい出てきました。全部を分析するのは本当に大変なので、そのミスから8個くらい選んで分析していきました。いくつか例を挙げます。

 

1.プランを立てる前(確定させず)に走りだす

・焦り←止まっている時間がロス→プランを立てる前に走り出す方がロス→はやくプランを立てられるようになる→机上練=時間を決めてプランを立てる、旧図

・わからなくなったときに止まらなかった→もしかしたら先に進めば自分がわかる地形が出てくる確率があがる(という思い込み)→毎回ほとんどミスる→ちゃんと止まります

 

2.地形関連

・円の中の地形のイメージ

 あまりにも簡単なとき→余裕がある→視野を広く読む

 細かい地形のとき→動きながら(走りながら)細かい地形は読めない→もう少し時間  をかけて読んでみる

 見えた特徴物に飛びついた→地形をみていないから→読みましょう→プランを立てる前に走り出さない

・等高線を読めていない↔高さの意識→読む意識がないからできない。読む必要のないレッグと読まなければいけないレッグの判別→1legで旧図で慣れる→読図走で判断できるようになる→実践できる!

 

3.CP設定ミス、APとの切り替え

・本当にそのCPがいちばん速いのか→自分のこれまでの経験からの思い込みにとら われない

・わかりにくい(見る必要のない)CPをわざわざ設定する必要はない→どこまで地形を拾うのか→常に地形を把握する必要はある?→そのレッグが自分にとってどこまでミスのリスクをケアする必要があるのか、レッグを見て自分の技術を考えて決める

・簡単そうなレッグだと切り替えの意識が薄い→簡単そうに見えるだけで実は少し難しいから油断してミス→簡単なレッグほどプラン、脱出、アタックの基本動作を意識してみる

 

 だいたい出揃うと、自分の課題がはっきり見えてきます。

 

 そしてこれを踏まえると、次のインカレに向けて残された期間で自分は何をすべきか?が見えてきて、練習やレース、対策等の行動計画を立てやすくなると思います。

 

 一人だと解決策に行き詰まったり、意見が堂々巡りしてしまったりして挫折する可能性が高いので、普段アナリシスをみてもらっているコーチの方や、同じクラブの同期など普段一緒に練習している人とやってみてください。

 

 

 

 

 

アナリシスを書こう!

 

 自分のとった行動(ルート)を言語化することでまず頭を整理します。(事実を書く)

 次にどうしてその行動(プラン)をとったのかを考えます。プラン通りに行けなかったなら、なぜプラン通り行けなかったのかを考えます。そのプランは自分の身の丈にあったプランだったでしょうか。身の丈にあっていないプランを選択してしまったのはなぜでしょうか。どんなプランだったらミスせずに行けたでしょうか。今回とってしまった身の丈にあっていない難しいプランはどうすれば(何を意識していけば)できるようになるでしょうか。できるようにするためにはどんな練習をしていけばいいでしょうか。

 と、こういったようにミスの原因を明らかにした上で言語化をし、ひたすら「なぜ」を突き詰めていきます。

 裏adventの方でM.Tさんがおっしゃっていたように、「分析は言語化をしないと原因究明・原因理解に至らず次に繋がらない。」まさにその通りです...と私も思います。頭の中で、またアタックミスっちゃったな、次は気を付けよう!と思っても、ただその場で思っただけなのですぐに忘れてまた同様のミスを繰り返してしまいます(あくまで私自身の場合です)。ルートを言語化して、自分の思考・メンタル・技術を分析して、ラップセンターとにらめっこして、とことん「なぜ」を突き詰めて、自分と向き合ってみてください。

 「なぜ」を突き詰めていく過程でどうしても自分では解決できない(どうすればよいのかわからない)ことが出てくるかもしれません。そうしたら、遠慮なく上級生に質問すべきです。疑問に思ったことをそのままにしないことも成長への近道だと思います。頭の中にもやもやがある状態だと、次のレースで意識すべき課題がはっきりしません。貴重なお金!!と時間をかけて走る1レースでも無駄にしたくないですよね。頭の中をクリアにして、克服すべき課題をしっかり意識して、練習に、レースに臨みたいです。

 

 アナリシスは、ミスを分析することで苦手を可視化して、それを克服するため次にとるべき行動計画を立てるのに役立つと思います。自分の弱点がわかっていれば、練習会やレースで意識する課題が明確になり、上達スピードも速いんじゃないかなーと思っています。教える側も、こういうことが今の課題です!と事前にはっきり言ってもらえた方がきっと教えやすいです。また教えてもらう際にはしっかりと自分の意見を持つことも大切にしたいことの1つです。

 

 個人競技はどんな場面でも自分をコントロールすること、自分の能力を確実に把握することが本当に重要だと思います。

 自分は何ができて何ができないのか、それを可能な限り把握しておくことで、無謀なプランニングでも安全すぎるプランでもない自分に適したプランが立てられるようになります。現地から情報を拾う能力と情報を拾わなくても良いと判断する能力が、勝つためにはどちらも必要ですよね。(と学びました。)

 

 

 

得意を知りたい

 

 ミスを洗い出して自分の弱点を知ることは強くなるために重要ですが、それと同じくらい自分の得意を見つける(知る)ことも大切だと思います。私の場合、アナリシスを書いていると自分の欠点ばかりに意識がいってマイナス思考になってしまい、なかなか得意を見つけることが難しかったです。普段の練習会でランオブをしてもらっていいところを他者に見つけてもらったり、一緒のコースを走った人と反省したりして、弱点克服だけではなく、得意を伸ばすことももっと大事にしていきたいなあと思います。アナリシスをお互いに読み合うのもとても勉強になります。ほかの人の考えや意見を取り入れることで新たな視点を得られると思います。それに単純に他の人がどんなことを意識しながらオリエンテーリングをしているのか知りたくないですか?私は知りたいです。良いと思ったところは全部取り入れたいです。誰か、読ませて~~

(去年は同じコーチについていたK君のアナリシスを読んでいました。興味深かったです。)

 

 

 

 さいごに

 

 私はとても恵まれた環境でオリエンテーリングができていると常々感じます。1年生の頃はよくわからずもとりあえずたくさんの練習会に参加して、できるメニューは全部走って、たくさんさまよって、さまざまな外部合宿や練習会で、筑波の上級生だけではなく、本当にたくさんの方々に丁寧に教えていただきました。そのおかげで、皆さんのいいところをどんどん吸収して自分のオリエンテーリングに活かすことができて、何度か良い結果を残すことができています。この場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 

 そして、長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。 

 

~あなたは一年間戦い続けられますか??~東京大学というチームで選手権リレーを「2度」走るということ。

Orienteering advent calendar 2019 12/5

 

 こんにちは、東京大学OB1年目、入間市OLC所属の佐藤遼平と申します。東海高校オリエンテーリングを始め、現在キャリア7年目となります。個人としては、今年度は全日本大会M21E 10位で、他の実績は中日東海ブロックの選手権者になりました。オリエンテーリング界においては、そこまで目立たぬ中堅選手といったところの自分が何を書こうかと思ったときに思いついたのは、東京大学「2度」「選手権リレー」を走ったことについてでした。以下、章立てしつつ、お話していきたいと思います。

 

 「おおげさだよ~」とか「うちの大学だってそうだよ」とか少し皆様に失礼な内容となる部分もあるかもしれませんが、許していただけると幸いです。画像使用や個人名について、問題等ございましたらコメント等でご連絡ください。即時削除いたします。

 

 余計な一文を付け加えますと、今年学生としてのオリエンテーリングを終えて以降、一レース一レースが楽しくてしょうがない。逆に去年楽しくなかった理由が以下の文章に詰まっています。

 

 目次

Chapter 1 なぜこの内容で?

Chapter 2 一回目走るまで、そして1回目

Chapter 3 東大選手権リレーには「歴史」がある。

Chapter 4 二回目走るまでの一年間。

Chapter 5 憧れを実現するということ。

Chapter 6 二回目を走ったあの日のこと、そして。

 

Chapter 1 なぜこの内容で?

 

 選手権リレー。日本学生オリエンテーリング選手権大会リレー競技部門の通称。各大学だせるチームは1チーム3人のみの戦いで、日本で最も速い大学を決める戦い。毎年3月に行われ、このレースで4年生は引退となります。

 

 東京大学。41回のインカレリレーの歴史において最多の16回の優勝、41回中37度の入賞。ここ10年で8度の優勝を誇る絶対王者です。毎年選手層の厚さが自慢であり、インカレの個人戦の入賞者が選手権リレーを走れないということもザラです。優勝を逃し2位になることは完全なる敗北を意味します。

 

そのようなチームで私は2度走り、2度優勝しました!…自慢ですか?はいそうです。でも、この記事を書こうと思った理由は違います。

 これまでの東大の選手権リレーを複数回走った選手、ほぼ全員がインカレの個人戦優勝or準優勝を経験している中で、私の最高順位は5位。私は東大インカレリレー複数回出走者の中の底辺です。他の複数回出走者 (Y城選手、S保選手、F井選手、T市選手など) の2回目がほぼ年度初めから選手権リレーのメンバー当確であった中で、私が確実にメンバー入りであった瞬間は2年間ほぼありませんでした。

この2年間と同様の経験を知る人間は存在しえないだろうと思い、記事にさせていただいた次第です。このチームで走ることの難しさ、そのうえで勝つことの難しさを通じて、選手権リレーの魅力を少しでも感じていただけたらと思います。

 

Chapter 2 一回目走るまで、そして一回目の選手権リレー

 

 私がなぜ選手権リレーを目指したか。1年生の時に見た先輩たちが優勝する姿がかっこよかったからです。他の大学を圧倒し優勝するその雄姿にあこがれを抱きました。100人の大応援を受ける経験にもあこがれを持ちました。その後、良い競技環境のおかげで成長し、2年生で選手権リレーで補欠となりました。しかしこのインカレリレー2016、東京大学は金沢大学に敗北を喫します。あの瞬間は絶対に忘れません。名大と金大が最終コントロールに現れた現実が受け入れられず呆然と立ち尽くす、あるいは崩れ落ちる先輩、同期たち。自分もまたその一人であり、東大の選手権リレーは東大3走がゴールした瞬間ではなく、1位がゴールした瞬間に終わるという現実をはじめて学びました。

 これを機に本気で選手権リレーを目指すこととなるのですが、この1年については、他の大学の選手権リレーを目指す選手などと別段変わることのない、選手権リレーへのあこがれを持ち、一レースに全力で臨み、速くなっていくことが楽しかった一年でした。

 そして選手権リレーに選ばれ、1走としてM尾選手、T市選手という学生を代表する2選手と共に走ることとなります。

結果のリンク→https://mulka2.com/lapcenter/lapcombat2/relay-result-list.jsp?event=4452&file=3&relayClass=0

 私は体調不良をおして出場したこともあり1位と13秒差の4位で2走松尾選手にバトンをつなぎます。その後、2, 3走のWエースが盤石の走りで誰もを心配させない走り。見事優勝を手にしました。当日は喜びに包まれ、もみくしゃにされ、至高の瞬間を手にすることができました。

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ウイニングランの様子

 と、ここまでは良かったのですが、一日たつと人はいろいろなことを考え始めます。緊張はあったものの、後ろのエースに信頼を置いて自分は戦うべき重圧 (後述) と戦っていたか?4位でつないだ自分は東大の選手としてふさわしい成績であったか?自分は今回の走りを自分に、後輩たちに誇れるか?

 ここから得た回答は、単純でありながら、とても残酷な答えです。3年生の自分にはもう一度がある。だから

必ず選手権リレーをもう一度走り、自分の力で東大を優勝させなければならない。

 

 義務ではないのですが、これをこなさない限り自分は気持ちよく引退することができない、ということがこの舞台で走ったからこそ自分で理解できました。

 そしてこの決意は私の4年生の一年間をひどく苦しいものとさせたのです。

 

Chapter 3 東大選手権リレーには「歴史」がある。

 

 少々閑話休題。他の大学の隆盛衰退の変化が激しいこの界隈において先述の通り、37/41回で東大は入賞。第一回インカレで6位入賞の安藤さん (OLK0期)を擁し団体戦6位 (当時は個人戦団体戦は同レース)からその歴史は始まり、第二回インカレでは入賞を逃すものの (なんとこのときの補欠は山川克則さん)、以後失格以外で入賞を逃すのは第27回 (9位) のみ。当然数多くの名選手を輩出し、地域クラブで今も競技を続ける名選手も多いです。

 今でもインカレではOBの皆さまが結果に注目し、ときに結果が芳しくないと、OBから激励も込めた喝が入ります。身が引き締まる思いもありつつ、注目してくださるOBの皆様には感謝しかありません。

小話① 天国と地獄の祝勝会

 さて、選手権リレーで優勝すると、OB主催の祝勝会が開かれます。Y城さんやH田さんなど若手OBから、0期安藤さんまで幅広いOBの皆さんが祝ってくださいます。とにかく皆さん現役の時の成績もすごい。「俺はあのインカレで勝ってる」みたいな話もポンポン出てきます。競技以外の話のスケールもすごい。「(東大OLKで) 飲んでやらかして新聞に写真が載った」みたなバカ話から、「官僚としてテレインの開発を阻止した」みたいなとんでもない話も出てきます。OBの皆さまの卒業後の活躍にも驚かされます。しかしその日の優勝した当事者たち。話どころではありません。その様子は以下の通りです。

 (2017年度) 5人前はありそうな刺し盛りがでてきた。みんなで食べるものだと思い机の真ん中におくと「それは君の分だよ」と言われる。一人で大皿を平らげていると「どれがおいしかった?」と聞かれ「ウニとかマグロがよかったです!」「じゃあ追加で数人前注文しよう。」...「もうおなかいっぱい...」「いやまだ若いんだから...」

 (2018年度) 熟成肉焼肉店。店頭には人生で3回ぐらいしか見たことのない霜降りの肉塊がある...。霜降り肉のフルコースが終わって満足していたらなぜか締めのご飯のあとにお肉盛り合わせが4回ぐらい出てくる。最初は高級肉にはしゃいでいた一同、沈黙。N田見キャプテン「フォアグラになる...フォアグラ...」佐藤「できるだけ脂の少ない部位...」T市「もう残り全部お前が食えよ..」。

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まだこのころはふざける余裕があった。

 
 人生で最も苦しいレベルのフードファイトをなぜか高級な食材と調理で楽しむことができます。もったいない。ともあれこれも目標の一つとして、この幸せな食事会のために、OBの皆さまが一堂に会する機会を作るために、現役生は今日も戦っています。

小話② もこたん

 東大で選手権リレーを走るということ。私はかなり名誉なことだと思っています。その象徴である一つが東大を象徴する紺碧一色に染まったベンチコート、通称もこたんです。毎年受け継がれ、選手権リレーを走る人が、当日のみ袖に手を通す大切なコート。糸はほつれ3つのうちひとつには大穴が空き、背中の東京大学の文字はもう読むのも一苦労なほどのボロボロさが逆に歴史を感じさせます。このコートが何十年にもわたって選手の汗と涙を吸い続けてきたのでしょう。もこたんと呼ばれているのは単にもこもこだからなのか深い理由があるのか。

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このベンチコート、よく見るとボロボロである

 

小話③ 「インカレを振り返ろう」という冊子

 東大選手権リレー40年の歴史。これが詰まっている冊子がOLKにはあります。第一回から欠かさずすべてのインカレの結果と、当日の様子やそこに至る背景が鮮明に描かれています。180ページ×2冊。

 この中には、東大が優勝から長く離れた苦悩の時期の苦しい結果とその胸中。勝ちが確信されていた年のまさかのレース展開の詳細。メンバー選びが激戦となった年の選考の難しさ。

 文章を読むだけでも心にくるものがあり、東大選手権リレーにかけられているものの大きさとその歴史を感じ取ることができます。気になる人がいたらこっそり貸してあげましょう(笑)。

 

Chapter 4 二回目走るまでの一年間。

 選手権リレーで自分が東大を優勝させるために臨んだ一年は、それまでの競技を楽しんできた一年とは全く別のものでした。そこにあったのは「大学を代表する3人にいつづけること」「重圧と上手に付き合うこと」「他大学の選手と戦うこと」など様々な困難でした。がむしゃらに速くなることを求めればよかった、上だけを見ていたそれまで3年とは違うものでした。

 

①チーム内の位置が気になりすぎる一年

 突然ですが皆さん、自分が学生として、4月に開かれた練習会、ほどほどのレースで大学内2位でした。何を思うでしょうか。「上の奴を抜くために一年頑張ろう!」「ここが課題だなあ」「次のレースの目標は~にしよう」といったところでしょうか。

 しかし私の思考経路はもうすでにおかしくなっていました。「よし、選手権リレー圏内だ。」「でもチームを勝たせるエースになるには1位のT市を倒さなきゃ。」誇張でもなく、こんなことばかりを考えていました。ほどほどのレースをできたときはまだしも、レースを崩したときは、「こんなでは選手権リレーを走れなくなってしまう」というような思考が冷静な反省やたかが1レースだからといった開き直りを阻害します。練習会の1レースでさえも、結果が絶対に求められるようになってくる。ミスをすると冷静さを保てない。

 この中で、当然オリエンを楽しむ余裕は失われていきます。この一年で自分が楽しいと思えたレースは、2レースぐらい。ただひたすらどのレースも順位に支配されて辛い思いをし続けた。楽しい遠征でも、最後のレースが芳しくないと帰りの移動中ずっと落ち込むこともザラでした。

 

②そしてスランプへ

 まだ調子のよかった春は良かった。夏、私は強烈なスランプに陥ります。熱中症を繰り返したことにより発汗コントロールが効かなくなり1~2㎞走ると体が動かなくなってしまう症状に悩まされ続けました。

 否応なしに日々は過ぎていく中で、私がどうしても気になってしまうのは、他の部員の中での私の位置。後輩のO橋や同期のT垣が好調だったこの時期、夏の部内杯で7位となったころから、自分の相対的な評価が落ちていく現実にはあらがう手段もありませんでした。この状況は選挙でメンバーが決まる東大において致命的なことなのです。春は自分が東大の1位になれるかに固執していましたが、この時期は常に3位以内にいるのかを気にするしょうもない人間へと変わります。余裕は全くなく、常にO橋やT垣に勝る部分を探してもがきつづけました。そんなことに意味はないのに。

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この頃周りの人はこんなこと考えていると信じ切っていた、病んでいる

 

③秋以降増える不安と見えた希望

 偶然ギリギリで涼しくなり体調不良より復活したインカレロングで個人戦最高順位の5位をとりますが、東大内4位でもあり...。この時期から無意識のうちに「無理のある」スピードを求め再びのスランプに陥ります。

 秋以降気になってくるのは優勝のために不可欠な、ほかの大学の選手を倒すということ。前年度の結果からも、東北大、慶應、横浜国立、京都など多くのチームに対して完全に勝っているとは言い切れません。ましてや絶対的チーム、東大史上最強 と呼ばれた2012年ですら敗北してしまうという何とも言えない怖さが選手権リレーにはあります。そのためこの時期以降、明らかにほかの大学の選手より勝っているという確信が欲しくて仕方がなかった。強豪選手に敗れても、そういうこともあるとは捉えられず、インカレに直結して考えてしまう。ましてはスランプ気味で、名も知らぬ学生に負けるもんだから余計に焦りは加速します。当然東大内の争いもめっちゃ気になる。すると更に突っ込んだスピードでレースに入ってはミスをする。まさに悪循環でした。

 もう一つ。この時期ぐらいからはOBさんから選手権リレーを意識したような声掛けが入ることもあります。ありがたいことなのですが、自分のことしか考える余裕のないこのころの私には「今度こそ4連覇を」「今年は4年生の佐藤がエースとして...」などの言葉は余りにも重荷でした。

 転機が訪れます。久しぶりに入賞したKOLC大会の次の日の早大OC大会。前日の入賞のおかげの余裕と、少し足を痛めていたこともあり、「9割の力」でのレースを意識してレースに臨みました。するとどうでしょう、目の前の景色がすっと地図に落ちていく感覚が得られます。ゆっくりやったつもりなのに結果は2位。ここで私は自分が最近のレースでつっこみすぎていた事実に気づき、「自分のレース」をすることの大切さを思い出すことができました。このレース以降すべてのレースで自分のテーマは「自分のペースで」ということになります。様々な環境に周りが見えなくなっていた自分に大切だったのは、「結果はレースが終わって出るものであり、レース前からその日のレースの順位にプレッシャーを感じるものではない」「自分のよいレースをすることと、順位をとりにいくことは別」という当然の事実でした。心がぐっと楽になりました。

 そしてその年の年末の東北大合宿のファシュタでは、各大学のエース級と五分以上で戦い前に出ることができました。このたった1レースから得た自信は、春インカレまで自分を支え続けることとなります。

 

④そして冬を迎える

 選手権リレーの3番手付近の実力で冬を迎えるというのは恐怖です。10名を超えるロングエリートを擁し、2年生以下の成長が著しい時期でもあり。少し気を抜くと、その日好調な誰かというのは常にだれかいるのでその人に負けかねません。4人や5人で3つの席を争っているのではないのです。

 しかし、秋~冬で得た自信はここで大きな支えとして発揮されます。筑波大大会や山リハでの好成績は、この得た自信なしではなかったことでしょう。

 今後の選手権リレーにもかかわってくるので選考方法については語れませんが、この選考を私は危なげなく通過します。私に選手としての自信があったことが、選考通過するのに最も大事であったことだと考えています。前年の3月に目指した東大を勝たせることのできる選手に、紆余曲折を経つつもなることができました。

 これまで複数回選手権リレーを走ってきた選手には皆、インカレが近づく前から備わっていたものであったのではないかと思います。それだけの実績があったとも言えますが…。実績がないながらに、東大を勝たせる自信のある選手になれた→選手権リレーの選手になれたということだと思うのです。

 そしてともに選考を通過したT市選手、T垣選手と共に当日を迎えます。

 

Chapter 5 憧れを現実にするということ。

 

 また少し話がそれます。東大のセレクション。当然エリートレベルの実力をもった十数人で競い合って最後に残った3人。そんな捉え方もできますし、実際そういう部分もあります。その十数人のほとんどがインカレ個人戦入賞の可能性は全然ある選手ばかりでした。

 でも実は「自分が走って優勝することのイメージは全く持てなかった」「「選手権リレーを走りたいと思ったことは一度もなかった」なんて言葉が出てくることがよくあります。これ、同じ年度のインカレロングで6位と7位になった人たちの言葉です (勝手に使ってごめんなさい)。そのレベルの人たちから選手権リレーのせの字も出てこないときもあります。

 多くの選手が一年生のころ先輩たちを見てあこがれた姿でありながら、そのあこがれと自分を埋められるほどに打ち込める人、はこのスポーツにおいてはまだまだ少数であるのかもしれないですね。

 

 実際に選手権リレーに向けて動くチームという意味でも、チームのメンバーは東大の選手みんなでありながら、直接的にかかわる人間は少数であり、この人数が多い年ほど強い年でもあると言われています。東大において選手権リレーの舞台は特別である、という事実に今回さまざまな資料を漁り、見て改めて気づきました。

 

 それがどうであれ、選手権リレーの結果は東大を、それどころか東大OLK全体のそのインカレの雰囲気を支配します。これもまたほかの大学とは違うところです。その結果にだれもが歓喜し、ときに絶望します。当然他の個人、他の東大OLK所属大学の活躍にも一喜一憂しつつも、良くも悪くも春インカレの中心はそこにあります。OLKのたくさんの人たちが1年間サポートし続けてくださいます。

 それなのに3人が団体の年度終わりの雰囲気の多くを決めてしまう怖さと、だからこそ得られる憧れがその舞台にはあって、だからこそみんなを喜ばせ歓喜の輪の中心となれる舞台として、私は選手権リレーを走りたかったんです。

 

Chapter 6 二回目を走ったあの日のこと、そして。

 

 前日のインカレミドルにはもはやあまり力は入りませんでした(3月のインカレはミドル競技とリレー競技)。リレーへの気持ちが大きすぎたんだと思います。重圧、責任を感じつつも、当日リレーに対して緊張はあまりしませんでした。一年間感じ続けたプレッシャーのおかげで、大きく大舞台への耐性がついたように感じます。

 当日のレースのこと。今思い出すよりもずっと鮮明な、インカレ直後に書いた会内報の文章を引用します。(一部改変)ちょっと長いので読み飛ばしてもらっても大丈夫です。

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 スタート枠入り。OLK もっと盛り上げていけ!(オフィシャルの)K島さんがニヤニヤしてない。 大丈夫だって。右のほうの早稲田のO石の動きがうざかったから下を向いた。去年地図を開けるのに苦戦したからテープに指をかけておく。 1 分前。静寂が今年は気持ちいい。スタート!去年と同じペースで飛び出したら前に出たのでペースを抑える。スタートフラッグまで登り。スローペースで入りたかったからわざと先頭で歩く。誰も無理に抜いてこない、よしよし。R6 をしっかり捉えて乗る。ジョグペースだがみんな R6 に乗れてないので前に出る。1ポ先頭。ちょっと予定外。2 ポはパターン差でO石ともう一人誰かが前。コンタリングみんな遅すぎてイライラするのはよくないと思って前に出る。3 ポ。R2までコンパス振ってラフに下ればいいレッグ。加速したら誰もついてこない。落ち着いて、自分を信じて。人を気にしてもしょうがないので中盤まで丁寧に。足音やガサガサ音も聞こえない、一人ぼっちのレース。中間ラジコン。ここから難しそうだ。長い直進レッグ。CP まで完璧。あとはアタックだけ。コンパスを振りなおす。ここで振るのを失敗。なんかミドルスタート待機所っぽいエリア。リロケしろリロケ!

 こういうときいつもは焦って走り回っちゃうんだけど、不思議と落ち着いていて、ゆっくり丁寧に拾えるものを探して 亀裂を見つけてリロケ。体感 3分弱ミス。さすがに誰かに抜かれただろうがまだ立て直しは効く。(実際は抜かれてなかった)序盤京都が出遅れたのもでかい。2 レッグ続けてアタックを決めて、次はちょっと外したけど冷静にリロケしてミスは最小限に。2 本目の勝負レ ッグが来る。この日はまっすぐでいけると思った。藪を切って視界が開ける。誰もいない。見えないほど前に誰かがいるとは不思議と思わなかった。俺が1位 だ。14 のアタックで 30 秒ミス。高難度レッグだし必要経費だ。体力は残ってるしここからだ!と思ったら膝を打撲する。痛い。俺のレースこんなんばっかかよ。後ろを見るが誰も見えない。なら大丈夫だ。俺の仕事は一番前で渡すことだ。

 スペクテーターズレーン、雪がすごい。視界が広がると応援するみんなの姿。みんなの声で1位を確信、少し膝の痛みが引く。最後の登り、思い出したのは裏本郷トレ、あの登り、これまで一年間辛すぎたよな、でもこのためだったのかな?とか考えてたら膝の痛み復活。最後の直線は、T垣に何伝えるか考えてたり膝痛かったりでめっちゃ遅かった。「難しいよ!」って叫んでチェンジオーバー。1位、これは勝ったな。

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 今思い出しても、気持ちよくて仕方ないレースでした。この気持ちはインカレ報告書に最も現れています。

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ICMR2018報告書より抜粋

 最後になりますが、私は一生、あの森を抜けてみた景色を忘れることはないと思います。

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,会場では3月にしては強い雪が舞っていました。

 

 

結果へのリンク→https://mulka2.com/lapcenter/lapcombat2/relay-result-list.jsp?event=5128&file=3&relayClass=0

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 いかがでしたでしょうか。東大の選手権リレーのことを客観的に伝えるつもりが、団塊世代が退職後に書いた自叙伝みたいになってしまいました。これが老いというものなのでしょうか笑。思っていたものと違っていましたら申し訳ございません。

 

  とにかく、一度走るともう二度と引退まで離れることのできない選手権リレー舞台は一年間私を大いに苦しめました。選手権リレーにはいろいろな要素があります。部内での戦い、他の大学の選手との争い、名選手たちが残してきた歴史との戦い、その重圧の中での自分との戦い。でもその戦いの中でもまれることは大きな成長へとつながり、決して無駄なんかじゃなかったとわかる日につながります。そう断言できます。そしてこのレースは私の大学四年間、ひいては人生において、あまりにも特別なものでした。

 

 さて、また今年度、矢板の舞台にてインカレリレーは毎年のように開催されます。(http://www.orienteering.com/~icmr2019/)選手たちの戦いは既に始まっていて、その戦いは段々と私たちの目に入ってくる段階に来ています。

 

 この駄文を読んで興味を持った方はぜひ、当日現地で選手たちの一年の戦いの成果を目撃してほしいです。プレッシャーと戦いぬいてきた紺碧の映える東大の選手たちと、その歴史を崩そうと努力してきたライバル校たちの戦いに、今年も注目しましょう。

 

 最後にこれまでの戦いの歴史へのリンクを載せて、選手権リレーを走りたいと思った人、学生の戦いに興味を持ってくれた人が増えたことを祈って、締めとさせていただきます。どうか選手の皆さん、今年も一年の努力の乗った、「自分なりのベストレース」、見せてください。

 

ICR2016 

www.youtube.com

ICR2017 

www.youtube.com

ICR2018  

www.youtube.com