ミスの分析についてーアナリシスを深堀りする
こんにちは。主催者の方からお声がけいただき、Advent Calendar 6日目を担当することになりました、筑波大学4年の増澤すずと申します。
オリエンテーリングに関することで何を書けるか考えた結果、1年生の頃からずっと書いているアナリシスをテーマにして、それを深掘りしたミスの分析について書こうと思います。
興味のある方は読んでいただけると嬉しいです。
また、昨年のこの記事はアナリシスを書く上でとても参考になるのでぜひ読んでみてください。
アナリシスのすすめ - オリエンティア Advent Calendar
はじめてのアナリシス(仮)
先輩に良かったところと悪かったところを箇条書きで書いてみよう!と言われて書き始めたのが始まりです。
最初の頃は自分の走ったルートはもちろん、プランさえも記憶にありませんでした。つまりプランなんてほとんどせずにただ走り回っていました。頑張ってルートを思い出しながら書くのが大変でした…。たまに上級生に添削してもらいながら徐々に、冬くらいになってやっと感想文からアナリシス(仮)くらいのレベルまでは書けるようになってきました。
現在の形式で書くようになったのは、6月の東大大会@大泉寺渓谷からです。初めての大会で優勝できて嬉しかった思い出です。やっぱり表彰されるとやる気が出ますし、極度の負けず嫌いなので勝てると楽しいです。
2年生
ほぼ全レース・全レッグを書いていました。全部ミスタイムがついているし、いくつかレッグを厳選して反省を書くなんてできない、、、上手く行けたと思っているレッグでもミスタイムが10秒でもついていると、なんで、どうして、次はどうすれば、、、という風にひたすら考えていました。また、書き終えたアナリシスを数日後に見返して、自分が自分のコーチになったようなイメージで、自分のアナリシスを添削したりしていました。結構楽しいです。
練習会でも大会でも1レース1レースが貴重で、全部が楽しくて負けるのが悔しくて、教えてもらったことを忘れないうちに、これを別の所にも発揮できればいいのに…というくらいの集中力でアナリシスを書き上げていました。
3年生
アナリシスがやっと書けるようになってきて、3年目がいちばん伸びた気がします。言語化→分析の流れができて、自分を客観視できるようになってきました。自分の弱み(地形が読めない等々)、強み(比較的体力がある)を理解し、レースで自分を多少コントロールしてプランニングができるようになってきた?からちょっと結果を出せたのかもしれません。
3年生の後半からは筑波大大会の準備や授業、その他諸々でやっぱり忙しくなってきて、全部のレースを書くのは厳しくなってきました。なので、最低月に1本は書くとして、ターゲットレースにしぼってアナリシスを書いていました。
自分以外の誰かに添削してもらうと、何気なく書いた一言一句にも突っ込んできてくれるので、より深く分析ができて、アナリシスを書くことでどんどん自分の頭の中が整理されていくのがとても楽しかったです。
4年生(現在)
コーチとやりとりする都合上、ノートからWordに変えました。
ノートだとコメントを書くスペースが限られてしまって、ぐちゃぐちゃ(良い意味で)になってしまっていたのですが、wordに変えたことで見返すときにとても見やすくなりました。毎回3往復くらいやりとりするので、残りのスペースを気にせず、疑問に思ったことをガンガン書けるのがとても良いです。
自分で解決策を導けるように誘導してくださるので、考える力がより身についてきたように感じています。
ミスの分析
こんなにたくさんアナリシスを書いていて、しっかり振り返らないのはもったいないですよね。一度書いたら覚えられて課題も克服できるなら良いのですが、私はすぐ忘れてしまうので、昨年の春インカレ前にコーチの方とやった方法を少し紹介します。
期間を決めて(4~11月とか)自分が今まで書いたアナリシスを振り返り、オリエンテーリングにおけるミスを①身体的②技術的③精神的ミスの3つに分けて書き出します。
私の場合は、
①下りへの恐怖心
②たくさん(のちほど)
③人につられる、ゴールが見えて気が抜けるor焦る
次に、これらのミスに対してどうしてそのミスをしてしまうのか、そのミスを減らす(なくす)にはどうアプローチしていけばいいのか、課題解決策の検討をします。
①接地の仕方を変える。練習会でわざと急斜面を選んで下り練習する。そこでちゃんと走れれば恐怖心が消えるのではないか。=成功体験から自信をつけていく
③人につられる→自信がないから。→どうして自信が持てないのか→曖昧なプランで走り出しているから(→後述1.に繋がります)
ゴールが見えて気が抜けるor焦る→ビジュアル前後、隠れて読む(→駒ヶ根ICLでやりました)実践できると自信になるし次に同じような場面があったときに余裕ができます。
私は②の技術的ミスが15~20個くらい出てきました。全部を分析するのは本当に大変なので、そのミスから8個くらい選んで分析していきました。いくつか例を挙げます。
1.プランを立てる前(確定させず)に走りだす
・焦り←止まっている時間がロス→プランを立てる前に走り出す方がロス→はやくプランを立てられるようになる→机上練=時間を決めてプランを立てる、旧図
・わからなくなったときに止まらなかった→もしかしたら先に進めば自分がわかる地形が出てくる確率があがる(という思い込み)→毎回ほとんどミスる→ちゃんと止まります
2.地形関連
・円の中の地形のイメージ
あまりにも簡単なとき→余裕がある→視野を広く読む
細かい地形のとき→動きながら(走りながら)細かい地形は読めない→もう少し時間 をかけて読んでみる
見えた特徴物に飛びついた→地形をみていないから→読みましょう→プランを立てる前に走り出さない
・等高線を読めていない↔高さの意識→読む意識がないからできない。読む必要のないレッグと読まなければいけないレッグの判別→1legで旧図で慣れる→読図走で判断できるようになる→実践できる!
3.CP設定ミス、APとの切り替え
・本当にそのCPがいちばん速いのか→自分のこれまでの経験からの思い込みにとら われない
・わかりにくい(見る必要のない)CPをわざわざ設定する必要はない→どこまで地形を拾うのか→常に地形を把握する必要はある?→そのレッグが自分にとってどこまでミスのリスクをケアする必要があるのか、レッグを見て自分の技術を考えて決める
・簡単そうなレッグだと切り替えの意識が薄い→簡単そうに見えるだけで実は少し難しいから油断してミス→簡単なレッグほどプラン、脱出、アタックの基本動作を意識してみる
だいたい出揃うと、自分の課題がはっきり見えてきます。
そしてこれを踏まえると、次のインカレに向けて残された期間で自分は何をすべきか?が見えてきて、練習やレース、対策等の行動計画を立てやすくなると思います。
一人だと解決策に行き詰まったり、意見が堂々巡りしてしまったりして挫折する可能性が高いので、普段アナリシスをみてもらっているコーチの方や、同じクラブの同期など普段一緒に練習している人とやってみてください。
アナリシスを書こう!
自分のとった行動(ルート)を言語化することでまず頭を整理します。(事実を書く)
次にどうしてその行動(プラン)をとったのかを考えます。プラン通りに行けなかったなら、なぜプラン通り行けなかったのかを考えます。そのプランは自分の身の丈にあったプランだったでしょうか。身の丈にあっていないプランを選択してしまったのはなぜでしょうか。どんなプランだったらミスせずに行けたでしょうか。今回とってしまった身の丈にあっていない難しいプランはどうすれば(何を意識していけば)できるようになるでしょうか。できるようにするためにはどんな練習をしていけばいいでしょうか。
と、こういったようにミスの原因を明らかにした上で言語化をし、ひたすら「なぜ」を突き詰めていきます。
裏adventの方でM.Tさんがおっしゃっていたように、「分析は言語化をしないと原因究明・原因理解に至らず次に繋がらない。」まさにその通りです...と私も思います。頭の中で、またアタックミスっちゃったな、次は気を付けよう!と思っても、ただその場で思っただけなのですぐに忘れてまた同様のミスを繰り返してしまいます(あくまで私自身の場合です)。ルートを言語化して、自分の思考・メンタル・技術を分析して、ラップセンターとにらめっこして、とことん「なぜ」を突き詰めて、自分と向き合ってみてください。
「なぜ」を突き詰めていく過程でどうしても自分では解決できない(どうすればよいのかわからない)ことが出てくるかもしれません。そうしたら、遠慮なく上級生に質問すべきです。疑問に思ったことをそのままにしないことも成長への近道だと思います。頭の中にもやもやがある状態だと、次のレースで意識すべき課題がはっきりしません。貴重なお金!!と時間をかけて走る1レースでも無駄にしたくないですよね。頭の中をクリアにして、克服すべき課題をしっかり意識して、練習に、レースに臨みたいです。
アナリシスは、ミスを分析することで苦手を可視化して、それを克服するため次にとるべき行動計画を立てるのに役立つと思います。自分の弱点がわかっていれば、練習会やレースで意識する課題が明確になり、上達スピードも速いんじゃないかなーと思っています。教える側も、こういうことが今の課題です!と事前にはっきり言ってもらえた方がきっと教えやすいです。また教えてもらう際にはしっかりと自分の意見を持つことも大切にしたいことの1つです。
個人競技はどんな場面でも自分をコントロールすること、自分の能力を確実に把握することが本当に重要だと思います。
自分は何ができて何ができないのか、それを可能な限り把握しておくことで、無謀なプランニングでも安全すぎるプランでもない自分に適したプランが立てられるようになります。現地から情報を拾う能力と情報を拾わなくても良いと判断する能力が、勝つためにはどちらも必要ですよね。(と学びました。)
得意を知りたい
ミスを洗い出して自分の弱点を知ることは強くなるために重要ですが、それと同じくらい自分の得意を見つける(知る)ことも大切だと思います。私の場合、アナリシスを書いていると自分の欠点ばかりに意識がいってマイナス思考になってしまい、なかなか得意を見つけることが難しかったです。普段の練習会でランオブをしてもらっていいところを他者に見つけてもらったり、一緒のコースを走った人と反省したりして、弱点克服だけではなく、得意を伸ばすことももっと大事にしていきたいなあと思います。アナリシスをお互いに読み合うのもとても勉強になります。ほかの人の考えや意見を取り入れることで新たな視点を得られると思います。それに単純に他の人がどんなことを意識しながらオリエンテーリングをしているのか知りたくないですか?私は知りたいです。良いと思ったところは全部取り入れたいです。誰か、読ませて~~
(去年は同じコーチについていたK君のアナリシスを読んでいました。興味深かったです。)
さいごに
私はとても恵まれた環境でオリエンテーリングができていると常々感じます。1年生の頃はよくわからずもとりあえずたくさんの練習会に参加して、できるメニューは全部走って、たくさんさまよって、さまざまな外部合宿や練習会で、筑波の上級生だけではなく、本当にたくさんの方々に丁寧に教えていただきました。そのおかげで、皆さんのいいところをどんどん吸収して自分のオリエンテーリングに活かすことができて、何度か良い結果を残すことができています。この場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
そして、長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。