オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

インカレスプリント失格集とその対策案

 

 

 こんにちは、こんばんは。早稲田大学オリエンテーリングクラブ3年の大石洋輔と申します。中学1年生のころからオリエンテーリングをやっているので、もう競技歴は8年程度になります。好きな食べ物はスパイスカレー、嫌いな食べ物はいちごの加工品(特にハイチュウ)。好きなテレインは瑞牆の森、二子(ステマ)、嫌いなテレインはありません。全部好きです。よろしくお願いします。

 

 僕の話はどうでもいいですね。前の方々の記事がとても素晴らしくて恐縮なのですが、この記事では、アドベントカレンダーの場をお借りして、最近よく話題になるスプリント競技の失格、特にインカレスプリントに焦点を当ててまとめてみました。読みにくい箇所等あるかと思いますが、是非気楽に読んでみてください。

 

 なおこの記事の作成にあたり、KOLCの巨匠こと上島さんから沢山のアドバイスをいただきました!ありがとうございました。

 

 ◎初めに

 

 スプリント楽しいですよね。ウイニング15分くらいの短いコースで、体力ギリギリまで追い込みながらの多彩なルートチョイス、ナビゲーション。一瞬の気の緩みから生じるミス。盛り上がる観戦。フォレストと違って靴も汚れないし。大好きです。

 

 そんなスプリントですが、皆さんご存知の通り、日本で普及を始めたのはごく最近のことです。実際にインカレスプリントも今年で5回目ですし、自分が中高生のころはスプリントといえば、いわゆるパークOでほとんど体力ゲーでしたので、スプリントというものが、ここ5年ほどで急速に浸透したのだなあ、とつくづく感じます。

 

 さて本題です。残念なことに、インカレスプリントでは、ほぼ毎年失格者がかなりの数出てしまっています。その理由は上記したようにスプリントの歴史の浅さ故の、競技者の理解の薄さ、運営面でのノウハウがまだ確立されていないこと、などが原因であると思います。それに加えて、インカレ特有の性質(誘導の多さ、応援によって競技者が冷静ではなくなること、競技性の高さの追求によるイレギュラーなコース、などなど)も関係しているのではないでしょうか。私自身、今年のインカレスプリントでは多くの失格者が出てしまっていたことで、かなり寂しい気持ちになりました。

 

 ここからは若干自分語りになってしますのですが、僕は今年のインカレスプリントで2位になることができました。ですが、それは多くの有力選手の失格者が出た中での2位でした。自分の中では、憧れであり大好きだった4年生との最後のインカレスプリントということで、かなり思い入れがあったうえ、4年生が失格していなかったらタイム的には負けていたことを考えると、2位という結果はとてもモヤモヤさせられました。今でも手放しには喜べません。失格が多いのは、運営も選手も観客も誰も幸せじゃないんです。

 

 そういうわけで来年度以降のインカレスプリントでは、過去に生じたタイプの失格が出ないでほしいと思い、このアドベントカレンダーの場をお借りして、過去のインカレスプリントの失格の原因、それに対する自分なりの対策案をまとめてみようと思いました。

 

 ◎失格集

 

 ではいきます。ここからは2015年からの5回のインカレスプリントで多く出てしまった失格について紹介し、それに関する対策案をまとめていきます。初めに申し上げておきますが、一生懸命素晴らしい舞台を作りあげてくださった運営者の方には本当に感謝しています。あくまでもコースをしっかりと順番に回ることは競技者の義務であります。

 

 ただ、繰り返しにはなりますが、失格者が少ない方がみんなにとってハッピーだと思うので、今後の対策になればと思い、この場でまとめさせていただきました。ですから、運営者の当時の判断、行動を非難するつもりは全くございません。また、著作権など詳しいことが分からないので、何か問題ありましたら報告ください。

 

 ①2015年 富士見高原リゾート

 

 記念すべき第1回インカレスプリントです。テレインの特性を存分に発揮している上に、演出も凝っている最高のコースだと思います。めっちゃ走りたい。最高。神。流石トータス。話がそれました。

 

 

  • 3連続ショートレックによるコントロール飛ばし

 

 個人的に、この年で特筆すべき失格だと思います。ショートレックが同じ向きで連続していることでこの画像における10番を飛ばしてしまう選手が続出しました。机上で地図を見ると、飛ばすわけなんてないと思ってしまいますが、スプリント中、高速で走る選手にとっては、9→11に見えてしまったようです。

 

 対策としては10.11の数字を白抜きにすることで視認性を上げること等があると思います。また、これはコースセットとの兼ね合いがあるので何とも言えませんが、同じレック線の向きで連続させない、などがあると思います。

 

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(実際の地図

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(白抜きされた地図)

 

 

 

 ②2016年 天平の丘公園

 

 第2回です。この年ではあまり共通した失格がなかったのと、この回は自分が入学する前で詳しくないので飛ばします。ごめんなさい。

 

 

 ③2017年 時

 

 第3回です。岐阜県の集落を使って行われた市街地スプリントです。初めて(?)の市街地スプリントの試みだったり、私自身初めてのインカレエリートの舞台だったりと、とても印象に残っています。

 

 

  • 立ち入り禁止テープを踏んで失格

 

 まずはこれがあると思います。下の画像の通り、4番コントロールは階段の上についています。また、立ち入り禁止の境界には青黄テープが地面に引かれていました。足元より下にテープが引かれているので、階段の上からの視認性は低かったと推測されます。そのため、ある競技者は脱出の際、階段を駆け下り、勢い余って青テープを踏んでしまい失格になりました。

 

 対策としてはテープを地面に引くのではなくなるべくわかりやすい高さにする(ただ、渉外上の都合などから難しいことが多い)、テクニカルミーティングにて現地状況を伝える、階段から高速で下る競技者が勢い余ってしまう可能性を考慮したコースセットなどが挙げられると思います。

 

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(インカレ2017年度報告書より)

 

 若干話は逸れてしまいますが、最近失格させたい風潮への批判意見が多く出ていると思います。私もその意見に関しては同意です。運営者の方にもちろん悪意があるわけではないとは思うのですが、ルールに厳格すぎるが故の失格者の続出はスマートではないと思います。ルールというものは何か守りたいものがあるが故のものであり、ルールそのものを崇拝しすぎるのはよくないと思います。(この時の運営者の方の判断を批判しているわけではないので悪しからず。)

 

 

  • 誘導テープが辿れなくて失格

 

 続きましてインカレで頻繁に話題になる誘導テープについてです。下の画像の誘導区間では、短冊テープとレーン状のテープが混在していました。そのため、レーンから短冊への変化の際にテープが分かりにくくなっていました。また、レイアウトとして、進行方向左手にテープ、右手に観客という形がとられていました。結果として、右手の観客に気を取られ、テープを見落として途中で誘導を離れてしまう競技者が出てしまったようです。

 

 運営者は誘導終わり地点に「誘導終わり」の看板を設置してくれていたようですが、テクニカルミーティングでその存在を告知していなかったことが反省点として報告書にありました。

 

 以上より、誘導終わり地点には、看板の設置、もしくはコントロールの設置、またそのことのテクミでの提示をすることが対策としてあげられると思いました。

 

 また誘導テープそのものとしては、最初から最後までレーンにするのが理想だと思います。もちろんこれは渉外上の都合などで困難な場合があるとは思いますが。

 

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(現地でのテープ)

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(実際の地図)



 

 

  • 地図の全体的な色について

 

 話はまたもや失格の話から逸れますが、地図の視認性についてです。時の地図では、JSSOM2007の「競技エリア内に自動車が運行する道・区域があり、競技中に自動車の運行を停止・制限できない場合、競技者の安全確保を図るため、自動車の運行する道・区域は茶色の表記を濃くして示してもよい。」という箇所の採用から、車の通る可能性のある箇所は濃い茶色にて描かれています。個人的感想なのですが、これって耕作地の色と被って見にくくないですか?全体的に白っぽい色で道を描いた方が、全体的な視認性は向上すると思います。(あんまり地図図式については詳しくないので、見当違いでしたらごめんなさい…)

 

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(時)

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(海外のスプリントマップ)
 

 また、今年のCC7の前日大会として開催された時スプリントでは、道の赤味が軽減された、判読性の高い地図になっていましたので、ここで合わせて紹介します。

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(上の地図と同じ範囲、だいぶ見やすくなってるはず。)

 

 ④2018年 アルプスの丘

 

 第四回です。僕はトランポリンのしすぎで背中を痛めてしまっていたため欠場しました。せっかくセレ通ったのに本選を走れないと本当に悲しい気持ちになるので、皆様トランポリンのし過ぎは気をつけましょう(そういうことではない)。狭くて制約が多いテレインながら、しっかりとスプリントらしい良いコースなのに加えて、観客がテレイン全域にいて、観戦的にもとても楽しいスプリントでした。

 

 

  • 植え込みを切って失格

 

 三件の調査依頼が出たこの植え込みに関する問題についてです。問題となったのは、以下の画像の赤丸で示した箇所になります。コンタが植え込みの上に重なってしまっていて、一見するとこの部分の植え込みが切れている様に見えてしまいます。実際のところは、主曲線の太さは0.21mmであり藪の隙間の最小寸法の幅は0.40mmなのですが、高速で走りながらナビゲーションを行っている選手が惑わされてしまったのも、少しわかるような気がします。また、運が悪いことに、現地の植え込みも人が通れるくらいにはあいてしまっていたとのことです。

 

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(赤丸の部分が問題の箇所。コンタによって植え込みが切れている様に見える)

 

 若干、不運なこの件ですが、地図の印刷方法として重ね印刷がとられていました。これだと重なり合った部分の下のある色の情報が完全に消えてしまいます。ですので、対策としてJSSOM2007が推奨している特色印刷を行うべきと考えられます。

 

 また、当日では運営者の方が、テレイン内に存在する、地図上では通れないが現地では通れてしまう植え込みに対して青黄テープを巻いてくれていたようです。しかしこの箇所には巻かれていなかったようです。とはいっても青黄テープを全ての壊れた植え込みに巻く作業はとても手間のかかることなのでこれは仕方がありません。やはり特色印刷を行うのが一番の対策かと思います。

 

 

 ⑤2019年 中津川公園

 

 記憶にも新しい第5回です。スタジアムを使った非常に狭い範囲の中で、人工柵やスタンドを使った珍しいタイプのコースが組まれました。僕も実際に走ったのですが、常に応援を受けながら走れるので、地獄のような登りレックも頑張って走れました。インカレスプリントならではの非常に楽しい(そしてマジできつい)レースでした。今年のことでよく覚えているので少し細かく書いていきます。

 

 

  • 誘導の始まりが分かりにくい

 

 まずはこれが挙げられます。多くの有力選手が誘導を辿れずに失格となってしまいました。

 

 最初に、地図はこんな感じです。5番から誘導が開始されています。

 

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(GIFUICはマジで気が付かなかった。笑)

 

 次に状況です。5番コントロールが誘導の起点となっていますが、5番のついている崖は青黄テープで人工的に作られたもので、このテープに赤白ストリーマーが巻いてありました。なお5番コントロールの傍には「誘導ここから」の看板が置いてあり、誘導が存在することはテクミでも告知されていました。実際には以下のような感じ。

 

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茨城大学オリエンテーリングクラブ動画班のYouTubeより)

 

 一見すると、飛ばしようがなさそうな誘導ですが、問題点(?)もあります。

 

 ①5→6のレック線は誘導区間がありながら、ほぼ直線的

…一見すると普通のレックに見える。

②青黄テープに赤白ストリーマーが巻いてある誘導の不自然さ

…本来別々の用途で使われるべき、青黄テープと赤白テープが混在して用いられていることはやや問題かと思います。選手は青黄テープを見たら本能的に避けてしまうし、青黄テープに赤白ストリーマーが巻いてある事例は今までにないわけですし。

 

 ここでの失格者のうちのほとんどがシード選手であることをふまえて考えてみると、おそらく、速い選手達は4→5という簡単なレックの間に、複雑なスタジアム内のレックを先読みするべく地図に集中。そのため青黄テープに付いている赤白ストリーマーの短冊に気が付くことなく、看板も見逃してしまったのではないか、と考察します。実際、私自身も、スタート前にディスクリプションを見て、5→6で誘導あるんだと頭の片隅に留めていたおかげで、5番をパンチしてから誘導に気が付くことができました。上の画像からは想像できない何かが働いている誘導だったと思います。

 

 誘導の開始を分かりやすくする対策としては、赤白ストリーマーを青黄テープに付けないこと、また、誘導の見本をテクニカルミーティングで告知すること。誘導のあるレックでは、レック線をなるべく直線にしないこと。などでしょうか。

 

 また、東大OLKの椎名君がTwitterにあげていた対策案も紹介します。左が実際のもので、右が改善案です。

 

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 これなら自然と誘導を辿れそうです。

 

 また選手としても、ディスクリプションをスタート前に見て、あらかじめどこから誘導が始まるかを認識しておくことなどが大事かと思います。

 

 

  • 2MAPの切り替え地点での隣接コントロールによるDISQ

 

 非常に多くの失格者が出たものです。このレースでは2MAPが採用され、両面に地図が印刷されていました。そして13番にてマップチェンジが行われます。ここで失格になってしまった選手の話を聞いたところ、12→13が簡単に見えたため、12と13の間に先に2MAP目に裏返して先読みをしていたら、手前に出てくる21番をパンチしてしまった、とのことでした。

 

 運営者側の対策としては、2MAP目に切り替わるコントロールの近くには別のコントロールを置かない、などが挙げられると思います。

 

 しかし、これは正直競技者の責任が強いところでしょう。2MAP制のスプリントで切り替わるところでは、最大の注意を払うべきと感じました。そもそも21と2MAP目のスタート場所違うし。

 

 

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(1MAP目)

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(2MAP目)
 

 ◎まとめ

 

 大体こんなところでしょうか。もしも間違っているところなどありましたら、コメントなどで言ってください。もちろんTwitterとかでも大丈夫です。

 

 実際に調べてみると、誘導の失格がとても多くことを改めて実感しました。誘導をたどることはもちろん競技者の義務であり、先読みをしていたら見にくくて飛ばしてしまった、とかで許される話ではないと思っています。しかし、この記事を通じて来年度以降の誘導がより分かりやすくなって、変なDISQも減って、ペナの少ないみんながハッピーなインカレスプリントになれば幸いです。

 

 また、最後にはなりますが、これまでインカレスプリントという、運営が非常に大変なものを、継続的に開催してくださった運営者の方に改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

 

 

おしまい