オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

OKLinné、海外の強豪クラブの正体は?

初めまして一橋大学商学部3年の高橋英人です。現在ヨーロッパのオーストリアに交換留学をしていて、オーストリア人の勧めでスウェーデンのクラブに所属しています。今日は、スウェーデンの強豪クラブがどのような活動をしていて、日本人が海外クラブに入ることはおすすめなのかということについて記載していきます。この記事と合わせてクラブのHP(http://www.oklinne.nu/)を訪れて頂ければより理解が深まるでしょう。

 

OKLinnéとは?

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ウプサラというスウェーデンでは第4の都市でストックホルムの郊外にあたる場所を拠点にしています。Jukola(世界で一番大きいリレー大会)で4位、10mila(スウェーデンで一番大きい10人リレー大会)で5位と世界有数のクラブです。また、来年のO-Ringenの主催クラブでもあります。

 

OKLinnéにようこそ

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クラブハウス

クラブハウスには、更衣室、シャワー、キッチン、トークスペース、コンピューター室があり正直住もうと思えば住める環境が整っています。

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クラブバン

クラブハウスの横にはクラブバン2台が止まっています。大会に行くときは、自家用車を持っていない人はこれを使って会場に行きます。(無料で使えるのでお財布にも優しいです)さらに、お金を払えばプライベートでもレンタカーとして使用できます。



2大神テレイン Nasten, Lunsen

OKLinnéが強い理由を突き詰めると、この2つの最高難易度のテレインでトレーニングできるからに集約されると思います。来年のO-Ringenテレインとしてもメインに使われる神テレインです。特にLunsenは世界一難しいテレインとクラブメイトも自負していて、スウェーデン代表選手も1000回以上入ったが、いまだによくツボり、ほぼ毎回1分以上のミスをすると言っています。また、クラブメイトのおじいちゃんは30年以上この森に入ってきたらしいですが、ヘリコプターで上空から落とされたら、どこだかリロケできないと言っていました。メモリーが効かず、どれだけ難しいテレインかよく分かるでしょう。

 

Nåsten

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Nasten_map

Lunsen

 

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Lunsen_map

 

クラブメイト

一言で表すとゆりかごから墓場までで、部員数は1000人を超えるおばけクラブです。乳母車にのった生まれたての赤ちゃんから今にも歩くのが困難になりそうなお年寄りの方までいます。エリート選手には、スウェーデン代表選手をはじめノルウェー、スイスなどのヨーロッパ代表選手、アメリカ、オーストラリア国籍の選手など、多国籍のトップアスリートが在籍しています。

 

クラブ目標

チームは本気で悲願の10mila(先述したスウェーデンの一番大きなリレー大会)初優勝に標準を合わせて練習しています。では、どのような練習をしているのか見ていきましょう。

 

 練習頻度

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先月の練習日程

クラブのHPには、練習メニュー、時間、場所等などが掲載されています。見てもらったら分る通りほぼ毎日練習があります。

これ以外にも、クラブの人が自主トレしたい時に呼びかけて集まって練習するトレーニングバンクと呼ばれるシステムもあります。あのオリエンテーリング界で一番有名なジョルジュもウプサラに住んでいるので、たまにトレーニングバンクで練習を呼びかけてくれます。

 

練習内容

練習メニューは、オフシーズン(11月~3月)とシーズン(4月から10月)で大きく異なります。ここで忘れてはいけないことは、スウェーデンの気候です。スウェーデンの冬には、15時前に日が暮れ、気温は0度を下回ることも多く、雪も結構積もっています。

 

オフシーズン

気候条件からナイトオリエンテーリング、もしくは室内での陸上トレーニングが中心になってきます。

オフシーズンのメニューは主に以下の通りです。

  1. 室内陸上競技場でインターバル走
  2. コアトレーニン
  3. ナイトファシタ
  4. ナイトオリエンテーリング
  5. レース形式のオリエンテーリング

1. 室内陸上競技場でインターバル走

週に2回程度行われます。600m×10~15本や400m×15本など1本1本8,9割のスピードを出すというよりは普段の長距離走より早く走ると言うことに重点が置かれてます。それでも先頭集団は1分45秒くらいで600mを12本こなしているので十分早いですね。

 

2. コアトレーニン

週1でトレーナーの檄を受けながら40分程度体幹や足を鍛える筋トレをみんなでひたすらやります。終わった後に余力のある人は、フィールドホッケをして遊びます。北欧ではアイスホッケが人気らしく、フィールドホッケのレベルも高すぎてついて行けません。

 

3. ナイトファシタ

週1でクラブのポイント練習です。先述したように10milaの優勝を第一に考えていて、10milaではフォーキングがない10km強の区間があるため、それを想定した練習です。ポストとかはなく、LineOを集団で行って行きます。エリート選手だけではなく、クラブの人が多数練習にこの参加に参加します。

練習後は、スープが提供されクラブハウス内で談笑することで、クラブの結束力を高めています。

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最長16kmまで用意されています

 

4. ナイトオリエンテーリング

スウェーデンでは、ナイトオリエンテーリングが当たり前で、昼間のオリエンテーリングと大きな違いがあるとあまり認識されていないため、距離も難易度も容赦なしです。

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フォーキングつきのナイトO

5. レース形式のオリエンテーリング

 クラブ版権の地図がたくさんあります。ウプサラのテレインは2.5mコンタで書かれていて、平らです。

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耕作地は入っても問題ないのでまっすぐ行けます

ちなみにオフシーズンは特定の大会に向けてピーキングをしている人がいないので、面白いイベントが沢山あります。クラブハウスでパティーが開かれたり、ロングジョグを行った後にクラブハウスのサウナでピザを食べる(これは、暑いしボリュームもやばいのでかなりしんどかった)、ナイトオリエンテーリング中に花火が上がるなど、このクラブ楽しいと思うイベントが盛りだくさんです。

 

シーズン中

3月に入る前に暖かい海外で合宿を2週間程度行います。今年はポルトガルで行われ、来年はスペインで行うことらしいです。3月辺りからメニューが変わり、大会に向けたメニュー変わり、週末は大会だらけになります。

 

1. クロスカントリーコースでインターバル走

 距離は正確に測れないので、4分×5本などのメニュー設定で行います。

 

2. コアトレーニン

 オフシーズンと同じ筋トレを週1で行います。

 

3. オリエンテーリングのインターバル走

 コースを2km弱にコースを分けてファシタします。

 普段よりも早いスピードでナビゲーションできる程度で走るのが狙いらしいです。

 

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10mila対策兼インターバルトレーニング

 

4. リレーに特化した練習

 何回も繰り返しているように、このクラブ全体としては、リレーで勝つことに全力で取り組んでいます。4月には10mila、6月にはJukola、10月には25manna(25人リレー)があります。リレー形式の練習が行われたり、ナイトオリエンテーリングをしたり(10milaとJukolaの殆どの区間は深夜)、チーム決めのセレクションレースが行われたりします。

 

5. 大会

 週2くらいであります。スウェーデンオリエンテーリング協会の日程をチェックしてもらえば分かりますが、シーズン中はほぼ毎日どこかしらで大会があります。スウェーデンチャンピオンシップ以外は、遠出をする必要は一切なく、ウプサラの場合、車で90分以内の範囲で大会はほぼ開かれています。さらに、スウェーデンにおける大会の魅力は、どんな小規模の大会でも500人程度は参加者がいて、シャワーやショップがほぼあることでしょう。

 

Jukola以降は、みんな1ヶ月程度の長期休暇に入り、夏は海外の大会が沢山あるのでクラブの練習はなくなります。そして8月の下旬から再開され、このようなメニューがシーズンが終わるまで続きます。

 

練習メニューについてまとめると、

ファシタ、陸上競技場やクロスカントリーコースでのインターバル走、リレーを意識した練習が日本のクラブより多いと思います。

 

結局、スウェーデンの強豪クラブに所属することは良いことなのか?

ここでは、スウェーデンの海外強豪クラブに入ることに絞り話を展開していきます。僕は総合的に見て良いことであり、もし興味があるならばクラブにコンタクトをとって見ることを強く勧めます。一方で日本人には厳しいなと感じた点もあるので、メリット、デメリットを書いていきます。

 

メリット

1. 安くオリエンができる

スウェーデンでは、オリエンテーリングはとても安いスポーツであるうえに、生活費も日本と同じくらいです。遠征数が少ないうえに、車でいく近場の大会なら(少なくともOKLinnéの場合)無料でクラブバンか誰かに連れてって頂けます。さらに、スウェーデンは他のオリエンテーリング大国と比べて物価が安いです。他にオリエンテーリングの強いクラブといったら、ノルウェー、スイス、フィンランドなどが思い当たりますが、これらの国は世界で1位、2位を争う物価が高い国です。(例えばスイスで日本のコンビニで売っているようなサラダパックが大衆向けのスーパで1000円します。)これに対して、スウェーデンは家賃、スーパーの値段は日本とほぼ等しく、外食しないなら日本より間違いなく安く暮らせるでしょう。

 

2. 練習機会が多い

一番のメリットは練習機会が多いことでしょう。森がすぐ近くにあり、OKLinnéの場合は週に5回程度練習があります。さらに、大規模クラブの場合には人が多いため、切磋琢磨しやすい環境にあります。

 

3. 言語の壁が薄い

スウェーデンでは、教育の発達や母国語がマイナー言語である点で、中学生以上は全員英語が堪能に喋れて当たり前の社会です。スウェーデン人は本当に優しいため、スウェーデン語が分からない人が1人でもいれば全体に対するメニュー説明などにおいても全部英語で説明してくれます。

 

デメリット

1. 地図上のポスト位置を通ったのか分からない

練習が沢山あるので、いちいち練習の度に設置などは行いません。一応テレインないに、テープが巻かれてたり、紙パックのポストが置かれていますが、あらゆる所にあるのでよく分かりません。みんなは慣れていて技術もかなり高いので問題ないらしいですが、僕はあの微地形を全てマスターできているわけではないのでここら辺かなといって過ぎることもあります。トレーニング効果が下がってしまうため、GPSを取り後で、どこを通ったかを振り返ることが大事になると思います。

 

2. アドバイスを深く聞かないと、生かしきれない

スウェーデン人は本当に歩きたての頃からコンパスを持って森に入っていて、技術が経験の積み重ねで構築されています。(OKLinnéには16以下の子供が200人所属しています)だから、アドバイスを聞いても最初はピントこないことが多いです。例えば、よく聞く回答として、コンパスをみて真っ直ぐと言われます。しかし、詰めて聞いてみると無意識に拾っている地形があり、当たり前に行っている動作があるようです。彼らが無意識に行っていることを聞き出さない限り、貴重な意見をもらっても残念ながら生かし切れません。納得できない回答が返ってきたときには、諦めずに聞き続けてみましょう。

 

結論

これらを全て加味した上で、スウェーデンのクラブに入ることをおすすめします。デメリットとして森でのトレーニング効果が落ちてしまう可能性を言及しましたが、森に行く機会が多いうえ、微地形のテレインでの練習でマップコンタクトが増え、マップリーディング能力が上がるため技術が上がることはたしかです。さらに、海外クラブは資金力があるため、筋トレやインターバル走に関しては日本で同質のトレーニングを受けるなら高額のお金がかかるほど、質が高いです。(例えば室内陸上競技場の場合、クラブのお金で貸し切っています)

もし興味がある人は、Jukolaの順位なり、10milaの順位で強豪クラブを調べてそこのホームページに行けば、他の国のヨーロッパ人がスウェーデンのクラブに入ることは当たり前なので英語の説明があるでしょう。(なければ、google翻訳スウェーデン語から英語に訳してみよう)これを読んで海外クラブに興味を持ってくれたら幸いです。

 

O-Ringenに行こう

最後に来年のO-Ringenの宣伝です。

このクラブの持つ神テレインNastenとLunsenが来年のO-Ringenの舞台です。世界最高難易度のテレインをぜひ堪能してみませんか。これらのテレインは、2.5mコンタで書かれるくらいスーパー平らで、5日大会で足の疲労がやばいということも起こりにくいです。テレイン以外に街も魅力的で、街全体がO-map化されています。ウプサラはストックホルム空港から電車で15分(ストックホルム中心部よりも近い)なので、アクセスも抜群です。こんな素晴らしい要素がそろった世界で一番大きな大会O-Ringenにぜひ参加してみてください。ぜひHPをチェックしてみてください(http://oringen.se/)