オリエンティア Advent Calendar

オリエンテーリングを語ろう。

田舎から渇望されるスポーツになろう

八ヶ岳レジャーセンター大泉の近藤です。

山梨県北杜市にある宿屋で今はオリエンテーリング関係者の皆様を中心にスポーツ合宿所の様な形で運営をしております。周囲はいくつものテレインに囲まれている=田舎です。

今回はそんな田舎に住んでいる個人として、田舎で事業を営んでいる事業者として、オリエンテーリングが今後発展していくにはどうすれば良いかについての見解を寄稿致します。

私が「こういう世界になれば、もっと好き勝手オリエンテーリング出来る様になるんじゃないか」という希望を書き連ねた物なので、そのあたりはご理解頂いた上でお読みください。

●田舎はアウトドアスポーツを求めている!

 田舎では都会に住んでいる皆様が驚く様な速度と加速度で高齢化が進んでいます。これによって田舎の経済は衰退し活気が失われています。これと相性が良いのがアウトドアスポーツで、実際に北杜市では自転車やトレイルランニングの大会が年間複数回開催されており多くの参加者を集めています。北杜市より顕著な所は山ほどあるかと思いますので、そういったスポーツイベントを歓迎してくれる地域は文字通り山の様にあるはずです。

 山林を縦横無尽に走るオリエンテーリングは、当該地域においてより多くの理解を得て実施されなければ成立しないスポーツです。そして地域の多くの人から理解を得ていれば得ている程、テレインが制約少なく永く使える様になると思います。

オリエンテーリングはそこまで求められていない!

 オリエンテーリングもこの類のスポーツに含まれますが、北杜市においてはトレランや自転車程地域から引く手が多いという状況では無いと感じています。トレランや自転車の大会は開催地域ぐるみの一大プロジェクトや毎年のお祭りという感じがしますが、残念ながらオリエンテーリングの大会はそこまでには至っていない印象です。

 その理由としてオリエンテーリングと他スポーツの違いとして、①経済活動規模が小さい②時期や場所が不定、という2点があると考えています。①について、他スポーツは社会人の参加者が多く一人当たりの消費額が大きいです。また、運営者の事前準備だけでなく、競技者の事前試走の需要もあります。②について、他のスポーツですと毎年大会の開催時期が決まっていて会場もコース決まっています。地域としてはどの時期にどの程度の活動が行われるのか予想しやすく、また一度お客さんを掴めばその次の年以降の集客も見込めます。また、前例を重んじる役所への通りも良いです。

●もっと地域にお金を落とそう、落とさせよう!

 オリエンテーリングの大会が行われた時、テレイン近辺にどの程度のお金がもたらされるのでしょうか。事業者という目線から言えばお金を落としてくれる人達を歓迎するのは当然です。しかし、「当日早朝に出発して会場につき、走り終わったらコンビニで買った昼食を食べ、そのまま帰る」という様な遠征ではあまり歓迎されないように思います。「前日の夜に着き、テレイン近くの宿に泊まり、昼食は会場の出店や近所の飲食店で食べ、温泉に入って帰る」という行動をする事で地域に沢山お金が落ちます。

 大会に参加する人全員がそれを意識して行えるのであればそれで良いのですが、運営者側にもいくつか出来る事があるのではないかと考えています。一つはスタート時間を早める事で前日入りを促し、また大会終了を早める事で大会後にその地域で滞在する誘因を高める事が出来ると考えています。また、出店者に関してもワンコインでの価格設定や大会参加費に出店での飲食代を含めてしまう(複数出店者がいる場合は工夫が必要ですが…)等の方策もあるかと思います。あくまで一つの打ち手なので、もっと効果的な方法はあるかもしれませんが。

●自分達が地図を作った地域に尽くそう!

 お金を落とすだけでなく人手も出すと、田舎にとっては、より無くてはならない存在になれると思います。トレイルランニング大会では運営者や参加者が事前に山道の整備を行う事があります。それは山を管理・所有・利用する人にとってはとても嬉しい事です。オリエンテーリングでも同じような事が出来るのではないかと思います。

 山梨県南アルプス市で活動している南アルプスマウンテンバイク愛好会という団体は「地域の奴隷です」と公言する程、地域の活動に協力しています。具体的には山道の整備だけでは無く、集落の土木作業や、お祭りの手伝い等も行うそうです。そうした活動を続けた結果、山の中にマウンテンバイク用の道を造成出来るまでに至ったそうです。また他所から「うちの山でもやってくれ」と言われるくらい地元から歓迎されているという事例があります。https://www.minamialpsmtb.com/history

 オリエンテーリングでも山の整備(ゴミ拾い・芝刈り・倒木処理)はすぐにでも手伝えることがあると思います。また、走行可能度という観点からも自分達がより快適にテレインの中を走れる事にも繋がる事だと思います。そんな活動を続けていけば、「オリエンテーリングの人たちに山を任せておけば安心」と思って貰えて、大手を振って山の中を走れる世界が来るんじゃないかと思います。また、地域の子供へのオリエンテーリング体験会実施、企業/団体への研修等もニーズがあるのではないかと思います。

 詳細は知りませんが京葉OLクラブの活動は私の考えている事ととても近い事なんじゃないかと想像して勝手に感心しています。(※ヘルメットを着用した方が良い様に見えますが…)https://twitter.com/Keiyo_OLC/status/1200626568625700865

●大会の参加費をもっと上げても良いんじゃないでしょうか?

 特に学生大会で感じる事が多いのですが、参加費が安すぎると思います。例えば2017年のKOLC大会@筏場は参加費4000円、つい先日あった岩手県立大学大会は1400円と爆安です。私はそれぞれ倍の参加費を払っても全く惜しくない感覚です。調査技術の進歩やプロ業者増加によって学生大会も高質な物が多くなってきているので、特に社会人相手にはそれに見合う価格設定をしても良いと思います。その利益分を部費に回し、部費から遠征費やインカレ等の大会参加費の補助を出す形にすれば、学生であっても前述の様に田舎にお金を落とせるようになるのではないでしょうか。

 その為には当然お金を払ってくれる社会人層の獲得(というか離脱防止)も肝要になります。私はおそらく離脱していない側の人間ですのであまり確かな事は言えませんが、仕事が忙しかったり家庭が出来たり地方への転勤・配属になったりが離脱の要因として挙げられるのではないかと考えています。本稿の内容とは少し外れるので、これに関する意見はまた別の機会に述べれればと思います。

●クラブの日ごろの練習も公開練習にしてしまおう!

 数年前の小泉さんの記事にもありましたが、オリエンテーリングは練習の機会がとても少ないと思います。オリエンテーリングを始めたい人も、続けたい人も練習する機会ってとても少ないです。(これも社会人の離脱要因になっている気がします)しかし、特に学生クラブにおいては平日でも夜に集まってランニング中心のトレーニングをしているクラブが多いかと思います。また合宿とかも「宿は自分で取ってね」というスタンスで公開する等の方策で、近くに住んでる(主に)社会人オリエンティアも巻き込んでいけたら面白いんじゃないでしょうか。ラントレだったら数百円、合宿だったら数千円であれば全然払ってくれる様に思えます。これもまた学生クラブの活動資金減に出来るのではないでしょうか。

●大会はテレインを選ぶけど、練習会は定期的に同じ場所で開催しよう!

オリエンテーリングの大会を毎年同じ地域で出来ても、同じテレインで開催する事は難しいと思います。しかし、練習会であればそれは容易に出来るので、一つのテレインを練習用のテレインとして定期的にそのテレインで公開練習会やトレーニング合宿でも開催すれば、田舎からも有難がられ、結びつきは強まっていく様に思えます。

●仕事で田舎に行っても絶望しない、逆にオリエンテーリングし放題!

 これらの話は活動しているクラブの拠点がテレインのある地域に近い事が前提になっています。都会にあるクラブや人が、地方にあるテレインや地図の運用をしていく事はなかなか難しい物があると思います。

 じゃあ地方にオリエンティアっていないのかとなると、配属やら転勤やらで意外とそうでもないはずです。きっとそういう人は知り合いが居ないと、どんどんオリエンテーリングから離れて行ってしまうので、地方の大学の方はそういう社会人の受け入れや勧誘に勤しむのも良いのではないでしょうか。

 遠征時の移動で高速道路をから見ていると「何ここオリエンテーリング出来るじゃん」という場所をいくつも見かけます。田舎はオリエンテーリング天国なので、地方に居る・来たオリエンティア/元オリエンティアは「周りに地図がないなぁ」ではなく、「大量の新規テレイン開拓余地有という天国の様な場所に来た」とマインドチェンジして貰えると願っています。


私自身もレジャセンに引っ越してきて2年以上が経ち、少しづつではありますが、この地域とオリエンテーリングを繋ぐ活動の糸口が見えはじめたという感覚です。同様の考えを持つ方が増えて他の地域でもオリエンテーリングの普及が進む事を願っています。

この記事でオリエンテーリング関係者の田舎に対する目線や付き合い方が変わるきっけとなれば幸いです。ゆくゆくは「オリエンテーリングの人たちを誘致して町おこしをしよう!」「オリエンテーリングの人たちに自分達の山を預けよう!」という様な声があがるようになればいいですね。

以上